こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

祝宴!シェフ

otello2014-11-06

祝宴!シェフ 總舖師

監督 チェン・ユーシュン
出演 リン・メイシウ/トニー・ヤン/キミ・シア/ウー・ニェンチェン/クー・イーチェン
ナンバー 175
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

山海の珍味に手を加えた豪勢なメニューよりも、ビーフンや白菜、トマトと卵といったどこでも手に入る食材を使った料理に感動する経験は誰にでもあるだろう。それは素朴だが愛情のこもった隠し味が懐かしい思い出と共鳴するから。作った人の、食べさせる人への思いは、どんな調味料よりも深く心に沁みこんでいくのだ。物語は、料理嫌いだったヒロインが賞金目当てにグルメ大会に出場する姿を通じて、おいしい食事の意味を問う。味覚にまつわる記憶はその人の人生そのもの、叶わなかった恋や壊れた愛もあった、それでも父の慈しみと母の優しさは決して忘れない。美しく盛り付けられたにおい立つような料理の数々に思わず唾液を呑み込んでしまった。

売れないモデル・シャオワンは借金取りから逃れるために実家に戻り、継母の食堂を手伝う。そこで料理コンサルタントのルーハイと共に様々なレシピを研究し、“宴席料理選手権”にエントリーする。

台湾には、村から村、町から町へ包丁一本携えて渡り歩きながら宴会料理を一手に引き受ける“宴席料理人”という職業があり、シャオワンの父は“神”と呼ばれた名コック。ところが料理よりもオシャレが好きで、父が遺した秘伝のレシピも失くしたシャオワンは、ゼロから料理を学ばなければならない。彼女はルーハイの指導の下、受け継いだ料理センスを早速開花させ、持ち前のポジティブな性格も相まって瞬く間に腕を上げていく。このあたり、シャオワンを演じるキミ・シアのとぼけた味わいが映画を明るくし、テンポがよくない映像にアクセントを与えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、シャオワンの成長譚としては彼女が料理人を目指す動機が弱い上、修行とはいえないほどぬる〜い調理場面とオチが読めてしまうドタバタの連続はやや間延びした印象。心象風景をいちいち大げさに再現するのも時代遅れな気がする。そもそもシャオワンの料理に対する情熱があまり感じられなかったのが残念だった。

オススメ度 ★★

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