こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パリよ、永遠に

otello2015-02-05

パリよ、永遠に Diplomatie

監督 フォルカー・シュレンドルフ
出演 アンドレ・デュソリエ/ニエル・アレストリュフ
ナンバー 25
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ワルシャワ瓦礫となった。ベルリンは焼け落ちた。しかし、パリは無傷で守らなければならない。そこが故郷であるだけでなく、町自体が壮大なヨーロッパ文明の蓄積であり、それを次世代に遺すのが受け継いだ者の責任だから。たとえ戦争中であっても。物語は第二次大戦末期、パリ破壊を命じられたドイツ将軍と計画を思いとどまらせようとする中立国外交官の駆け引きを描く。闇の中から突然現れ将軍の説得を試みる外交官、命令は絶対と頑なに拒む将軍。その過程で将軍は、蛮行に手を下したくない本心と家族の安全を天秤にかけ、さらに軍人の本懐と独仏の未来の軽重を問われる。言葉こそ何が正しいかを定義し、人を動かす。いまだ変わらぬパリの美しさが理性の勝利を謳いあげる。

ドイツ軍在パリ総司令官・コルティッツは、歴史的建造物やセーヌ川に架かる橋に仕掛けた爆弾に着火命令を下そうとしていた。長い会議の後、スウェーデン総領事・ノルドリンクの訪問を受ける。

ドイツの敗色は濃厚、だがヒトラーの狂気はパリへの憎しみに転じている。代々軍人家系のコルティッツは祖国には忠誠は誓っても、ナチスには同調していない。ノルドリンクはそんな彼の軍人の矜持を巧みにくすぐりつつ、人間としての良心に語りかける。ナポレオン3世の隠し階段がきちんと機能するなど、歴史上の人物を同じ部屋にいる感慨がコルティッツの心に湧き、そしてついに妻子を人質に取られ仕方なくヒトラーに従っているという本音を引き出す。一幕芝居風テンポの会話は緊張感の中にも教養と薀蓄がちりばめられ、戦争と和平を繰り返してきた独仏のはざまでもお互い対する敬意を失わない知識人は確かに存在していたことを訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて妻子の救出を確約したノルドリンクはコルティッツを翻意させ、現れた時と同じように姿を消す。町のみならず数万の人命も救ったにもかかわらずノルドリンクを英雄視しないは、彼があくまでパリを愛する市民のひとりであり、その思いは今も生きているのが明白だからなのだ。

オススメ度 ★★★

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