こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミルカ

otello2015-02-06

ミルカ BHAAG MILKHA BHAAG

監督 ラケーシュ・オムプラカーシュ・メーラ
出演 ファルハーン・アクタル/ソナム・カプール/ディヴィヤ・ダッタ/ジャプテージ・シン/パワン・マルホトラ
ナンバー 29
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

かかとから生えた翼で飛ぶように駆ける。スパイクなんかいらない、足の指が大地をしっかりとつかんでいるから。そんな若者が、才能を見出され本格的なトレーニングに身を投じた時、彼の目の前には“世界”が開けていく。映画は陸上競技400m走で世界記録を打ち立てたインド人ランナーの半生を追う。国際大会では破竹の勢いだったのに、なぜオリンピックでは勝てなかったのか。原因となった少年時代のトラウマを始め、数奇な運命に翻弄された後に陸上競技に出会い、やがて挫折を経て国民的英雄になるまでが描かれる。主人公の、ただただ速く走るためだけに鍛え上げられた肉体が、己に課した試練の過酷さを饒舌に物語っていた。さらに、西欧の植民地支配が招いた国境地帯の宗教対立は現代の中東情勢に通じるところもあり、紛争で血を流すのはいつも弱い者であることが示される。

ローマ五輪、ゴール直前で振り返ったためにメダルを逃したミルカは、帰国後インド-パキスタン親善試合の主将に選ばれるが頑なに拒む。彼には、インド独立時に故郷の村をパキスタン人に焼打ちにされた記憶が染み付いていた。

難民キャンプで育ったミルカはゴロツキになるが、軍隊に入って“走り”のポテンシャルを発揮する。最初は雑役免除と牛乳目当てだったのが、ナショナルチームのブレザーに袖を通す夢に向かって脇目も振らず練習、ついにメルボルン五輪出場権を手に入れる。だが、本番前の調整失敗で惨敗。ミルカは世界記録を目標に、高地でタイヤを引いて持久力をつけ、血を吐くまでダッシュして精神力を高め、急な岩場を駆け上って瞬発力を磨く。その、身も心も研ぎ澄まされていくシーンには圧倒的なリアリティが宿っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その間、姉への恩返しや失恋と放蕩など、様々な栄光と失意を経験する。それらのエピソードはエモーショナルな表現に彩られ、過剰な映像とサウンドとダンスがこれでもかとミルカの感情を押し付けてくる。インド映画とはそういうものとわかっていても、甘い洋菓子を食べすぎたような気分になってしまった。。。

オススメ度 ★★*

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