こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

悪党に粛清を

otello2015-04-11

悪党に粛清を The Salvation

監督 クリスチャン・レブリング
出演 マッツ・ミケルセン/エバ・グリーン/エリック・カントナ/ミカエル・パーシュブラント/マイケル・レイモンド=ジェームズ/ジェフリー・ディーン・モーガン/ジョナサン・プライス
ナンバー 82
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人の命を虫けら同様に扱い、無関係な他人に向かって躊躇なく引き金を引く無法者。己の所業に一点の疑いも持たず、欲望に忠実に動くのみ。きっと世間に対する憤怒があるのだろう、だが映画はそこには触れず、ただただ彼は“絶対悪”としての存在感を示す。物語は開拓時代の米国に移住してきた元デンマーク兵が、ならず者に殺された妻子の仇討ちを果たすが、逆にその兄から報復を受けるという復讐の血なまぐさい連鎖を描く。悪党の顔色をうかがう町長、見て見ぬふりをする保安官、恐怖で声を上げられない住民、立ち上がる主人公……。法の統治から見放された荒野の町で繰り広げられるデンマーク人が監督・脚本・主演のウエスタンは、意外なほど“正統派”の風格を備えていた。

家族と共に駅馬車に乗ったジョンは、妻子を手にかけた同乗のチンピラを射殺する。チンピラの兄で“自警団”のボス・デラルーは町の住人に弟殺しの犯人を差し出すよう要求、保安官はジョンの身柄を引き渡してしまう。

軍人だったジョンの射撃の腕は非常に高い。急所を一撃し、息があれば間髪入れずとどめを刺す。ジョンの兄・ピーターも銃やナイフに長け、脱獄後ひとりでデルラーの子分たち数人を音もなく倒していくシーンは「ランボー」を彷彿させる。ジョンもまた巧みに罠を仕掛け陽動作戦を取るなど、故国では数的に勝る敵軍にゲリラ戦を展開する特殊部隊にいたのではと思わせる手際よさを見せる。そのあたり、ガンマン同士の早打ちを競う“決闘”の様式美を捨て、近代戦の戦術を取り入れたテイストがユニークだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

デラルーの下で経理を担当する無言の元娼婦や裏でデラルーと結託していた町長など、抜け目なく漁夫の利を狙う輩も暗躍する一方で、デラルーに恨みを抱いてジョンに力を貸そうとする者もいる。砂埃と驟雨、満月の夜と太陽の灼熱、それら自然の風景が織りなすコントラストを背景に強烈な怒りと憎しみが染み付いた映像からは、人間の業の深さが滲み出していた。

オススメ度 ★★★*

↓公式サイト↓