こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストレイヤーズ・クロニクル

otello2015-02-25

ストレイヤーズ・クロニクル

監督 瀬々敬久
出演 岡田将生/染谷将太/成海璃子/松岡茉優 白石隼也/豊原功輔/石橋蓮司/伊原剛志
ナンバー 35
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

望んで身につけた能力ではない。“進化”の実験台として研究室で生まれた子供たちは、自我の芽生えと共に疑問を抱き始める。自分たちはいったい何者で何のために存在しているのかと。その答えは皮肉にも、同様の目的で創造された別系統の若者たちに教えられる。物語は、脳のポテンシャルを極限まで高めることで感覚と肉体を増強した一団と、遺伝子操作で野生動物の特性を取り入れたグループが、抗争と和解を繰り返しつつ彼らを生んだ世界に復讐していく過程を描く。「X-メン」のように理解して導いてくれるメンターはいない。利用価値があるうちは援助してもらえるけれど、命令を聞かないと危険視される。そんな彼らの、普通の生活を送れない生きづらさがリアルに再現される。

政府高官・渡瀬にアゲハという犯罪者集団の確保を命じられた超能力者の昴は、かつて一緒に育てられた仲間を集める。遺伝子学者を拉致したアゲハたちの元に昴らは駆けつけるが、彼らもまた超能力者だった。

ひとりでは暴走してしまいそうになるのをリーダーである学がうまくまとめ、それぞれの得意分野を生かす戦術を取るアゲハのメンバーは殺人も厭わない。一方、里親に愛情を注がれた昴たちは倫理観や人間的な感情を具えている。渡瀬に命運を握られている昴の逡巡を一瞬で見抜いた学は、奇妙な共闘関係を結ぼうとする。倒すべき悪は誰なのか、どうすれば生き残れるのか、圧倒的な能力に潜む致命的な欠陥が更なる地獄に彼らを引きずり込む。“生きたい”、ただそれだけの願いを叶えるために人目を忍んで戦う、まっとうな使い道のない特殊能力を持ったがゆえの苦悩が切ない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

昴たちは時に脳が耐えきれなくなる「破綻」を起こし、老化が早いアゲハたちは寿命が尽きかけている。人生と命を弄ばれた挙句、さらに渡瀬の野望の踏み台にされる若者たち。それでも自らの意志で運命を変え、未来に託すべき希望のために犠牲になっていく姿は、死の美学に彩られていた。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓