22人のダンサーが激しくしなやかに踊り狂う。狂乱の中の美しさ、スピーディかつキレキレの動きは人生の喜怒哀楽を表現する。骨が抜けたかのような柔らかな手足の使い方をする一方、全身にバネが入っているかのように感覚に身を委ね飛び跳ねる彼らの身体能力の高さには思わず目を見開いた。物語は、人里離れたスタジオ兼宿泊施設で、公演の最終リハーサルに臨んだダンサーたちの一夜を追う。それぞれ面接でダンスに対する思いとダンサーとして生きる覚悟を問われたプロたち。彼らの肉体から発せられる圧倒的な生命力はビートの効いた音楽によってより効果的に引き出される。10分以上にも及ぶ集団舞踏をワンショットでとらえた前半部は息をするのも忘れるくらいの緊張感に満ち、“ダンスの力” を思い知らされた。
オーディションを経て選ばれた男女は、全員が参加しての振り付けチェックを終え一息つく。だが打ち上げが始まっても興奮は冷めやらず、各々が得意のパフォーマンスをソロで披露する。
供されたサングリアに何者かがLSDを混入させたことからダンサーたちのテンションはますます上がる。最初の内は理性的に振舞っていても、気が大きくなる者、気分が悪くなる者、性欲が高まる者など各人反応は様々。我関せずとひとりポーズを取り続ける者もいる。ところが、厳しいレッスン中は抑制してきた赤裸々な本性が解放されると情動は一気に爆発。彼らは心のおもむくままに行動する。エゴ丸出しの者、嘘をつきとおす者、さらなるドラッグを欲する者。もはや正気を保っている者はいない。隔離され閉鎖された空間は終末を迎えた世界のような混沌に陥る。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
さらに配電盤室に閉じ込められた子供が電気を止め、全館非常灯の灯りだけになってしまう。赤っぽく暗い光だけ、ほとんど何も見えない。彼らはもうこの状況を受け入れるしかないのか。高度に洗練されたダンスを堪能した前半と、この上ない不快に突き落とされる後半。2つの顔を具えたこの作品は、複雑で繊細な人間の二面性を訴えていた。
監督 ギャスパー・ノエ
出演 ソフィア・ブテラ/ロマン・ギレルミク/スエリア・ヤクーブ/キディ・スマイル/クロード・ガジャ・モール/ジゼル・パーマー/テイラー・カスル/テア・カーラ・ショット
ナンバー 276
オススメ度 ★★★*
↓公式サイト↓
http://climax-movie.jp/