こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン

otello2015-03-14

リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン
Revenge of the Green Dragons

監督 アンドリュー・ラウ/アンドリュー・ロー
出演 ジャスティン・チョン/ケビン・ウー/ハリー・シャムJr/レイ・リオッタ/シューヤ・チャン
ナンバー 22
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

夢の新天地を期待していたわけではないが、待っていたのは劣悪な環境での過酷な生活。差別され搾取されても泣き寝入りするしかない。選択肢は二つ、このまま奴隷のような人生に甘んじるか、命を捨てる覚悟でギャングになるか。物語は1980年代、中国から密入国した少年が裏社会の洗礼を受け、愛と友情のはざまで葛藤する姿を描く。才覚と努力でのし上がるチャンスを与えられる自由の国・アメリカ、だが裏切りと欺瞞に満ちた世界では肉親にすら銃口を向けなければ生き残れない。対立し抗争を繰り返すチンピラたち、移民社会のもめ事には無関心の警察、そして不法滞在者を仕切る女ボス。誰にも頼れない状況で自分の直感を信じて進む主人公の哀しい視線が胸に突き刺さる。

密航船でNYに渡った孤児のサニーは、同い年のスティーブンの母親に預けられる。中国系マフィア・青龍に入会したスティーブンはサニーも仲間に加える。数年後、成長したサニーは香港歌手の娘・ティナに恋をする。

清龍のボス・ポールは柔らかい物腰で暴力臭を消し、中国系刑事ともうまく付き合っている。おかげで死人が出ても中国人だけで解決することができる。ところが、古くからのチャイナタウンのボス連中には相手にされず小僧扱い。そんな現状を変えるべくポールはヘロイン取引に手を出し、香港からの密輸の手配をサニーに任せる。一方で上納金欲しさに親戚の麻雀店を襲うなど、次第に組織内での立場を失っていくスティーブン。ガキの頃は面倒を見てくれても、大人になって役に立たない者は容赦なく切り捨てられる。映画は厳しい掟に翻弄され、己を見失い、心が荒んでいく彼らの苦悩を、暗く沈んだ映像で再現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

当時はまだ経済的に後進国だった中国と移民政策を転換した米国。国同士の思惑が一致した結果、多数の中国人が海を渡った。おそらく出身地別に棲み分けていたのだろう。そこには彼ら独特の思想習慣があり、白人が死なない限り警察が不介入な以上、自治が必要になる。ある意味犯罪組織も“必要悪”であるとこの作品は示していた。

オススメ度 ★★*

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