こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カフェ・ド・フロール

otello2015-04-14

カフェ・ド・フロール Cafe de Flore

監督 ジャン=マルク・バレ
出演 バネッサ・パラディ/ケビン・パラン/エブリーヌ・ブロシュ/エレーヌ・フローラン/マラン・ゲリエ
ナンバー 87
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

彼女は誰よりも彼を大切にしていた。彼が死ぬまで思いを貫くはずだった。彼もまた彼女との絆は永遠だと信じていた。魂で結ばれた相手と出会うまでは。並行するふたつの時代、前後する小過去と大過去と今、錯綜する夢と記憶と感情、それらバラバラだったピースをひとつずつ組み立てていく過程で浮かび上がる大いなる意図は、人はなぜ生まれ何のために生きるのか、答えの一端を提示する。物語は現在のモントリオールで暮らすひとりの男とふたりの女、そして20世紀パリのシングルマザー家庭の、愛の彷徨を描く。世界は耳目でとらえた事象だけではない、未来は己の意志だけで決まるのではない。もっと大きな“運命の力”を感じることで人生の真実を理解できるとこの作品は訴える。

長年連れ添った妻・キャロルと平穏に過ごしてきたアントワーヌは、ローズを初めて見た瞬間体を貫いた衝撃が忘れられず、彼女と同棲し始める。娘も引き取り幸せを満喫するが、キャロルへの罪悪感が拭いきれない。

一方、ダウン症児・ローランを女手ひとつで育てるジャクリーヌは、偏見と闘いながら彼を普通学校に通わせる。ローランは母を頼りジャクリーヌは息子を守る、ふたりの関係は彼らだけで完結した小宇宙のようで、苦労が多くても一緒にいれば満たされている。それは一日でも息子より長生きしなければならない母の決意でもあり、彼女自身の生きる糧でもある。ところがローランはヴェラという女の子と恋に落ちる。教えていない“愛”の意味を、ローランがジャクリーヌに話すシーンは、どんな言葉よりもその本質を伝えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

キャロルは頻繁に幻覚に浸り、そこにジャクリーヌたちのヴィジョンが浮かび始める。叶わなかった願い、届かなかった祈り。やがて二組の家族の秘密が明らかになっていく。本来、ローズに心変わりして家を出たアントワーヌを憎むべき立場にあるキャロルが、彼らの結婚式を本心から祝福する。彼女の寛容は、わが子に対する親の愛情のみが純粋に無償でありうると語っていた。

オススメ度 ★★★

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