こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私の少女

otello2015-05-22

私の少女

監督 チョン・ジュリ
出演 ペ・ドゥナ/キム・セロン/ソン・セビョク
ナンバー 115
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

傷心のまま左遷された女は排他的な村人たちの中で孤立していた。彼女が出会ったのは父と祖母から虐待を受けている少女。2人はお互いの傷をなめあうように一緒に暮らし始める。そして女は孤独を癒し、少女は初めて愛される喜びを知る。物語は寂れた漁村にやってきたキャリア婦警が少女の父との対立を深めていく中で、抜き差しならない状況に追い込まれていく姿を描く。その過程で明らかになる婦警の過去と少女の闇。人間関係の適切な距離感がわからずに同居する彼女たちが、感情をぶつけ合い葛藤する。それでも、完全に胸襟を開くのではなく、どこかに相手が踏み込めない領域を設け死守している。似た者同士だからこそ分かりあえる、彼女たちの繊細にねじれた心情が濃やかに再現されていた。

所長に赴任したヨンナムは、養父のヨンハから折檻されているドヒを保護する。ヨンハは警告されても耳を貸さず、ヨンナムは夏休みの間ドヒを預かる。ドヒの背中には生々しい打撲痕がついていた。

不法就労者を使った事業で収益を上げているヨンハは村人たちは一目置かれていて、ヨンハはやりたい放題。ドヒの問題だけでなく、不法就労者とのトラブルを抱えているため、ヨンナムは後に引けなくなっていく。一方でヨンハはヨンナムがソウルで起こした不祥事の原因を知り、逆襲に出る。まだまだ女性の社会進出が遅れている地方の警察署、ただでさえ“若い女所長”としてヨンナムは注目されている。そんなヨンナムが足元をすくわれた時、男たちが彼女に向ける軽蔑と好奇心と嘲笑が入り混じった冷たい視線に、警察という男社会における女の生きづらさが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

しかし、ドヒの計略でヨンナムは窮地を救われ、逆にヨンハが逮捕される。そこでヨンナムが気づいた、ドヒの心に棲む怪物。ドヒの祖母はなぜ死んだのか、ヨンハはなぜタイミングよく捕まったのか。無邪気に見える笑顔の奥で目覚めたドヒの暗黒面、彼女の未来には、希望ではなくファム・ファタールの予感が漂っていた。

オススメ度 ★★★

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