こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯

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“米軍が沖縄に植え付けた民主主義が、沖縄から米軍を去らせた” その言葉に凝縮される「沖縄の主権回復」に人生を捧げた男。罪をでっちあげられて投獄された。被選挙権を剥奪された。パスポート発給を拒否された。それでも「不屈」を座右の銘として彼は闘い続ける。映画は、沖縄の本土復帰と米軍基地反対を訴えた活動家の激烈な半生を追う。膨大な資料映像・写真から戦後沖縄で何が起きていたのかを丁寧に発掘し、往時を知る人々のインタビューから彼の人となりを探っていく。そこで浮かび上がってくるのは鋼鉄の意思の持ち主という人物像。現状を変えるには政治からと那覇市長に立候補すると露骨な妨害を受ける。市長に当選しても議会は敵だらけ、すぐに不信任案を提出される。米軍に依存する経済界もそっぽを向いている。逆境を乗り越える姿は信念を曲げない人間の気高さに満ちていた。

230冊の日記を遺した瀬長亀次郎は生涯を通して米軍と日本政府相手に基地問題を訴えた。政党を作り民衆の支持を集め選挙に勝ち、暴力ではなくあくまで言論を武器にその影響力を高めていく。

1950~60年代、沖縄統治の最高責任者たる高等弁務官は軍人が勤めていた。つまり政治家ではなく米軍による支配。反基地運動が起きると米軍は故意に断水させ市民生活を干上がらせる。フェンスの向こうの米兵一家が芝生に水を撒いているところを指をくわえて見ているだけだったという証言が、その当時の米軍と沖縄市民の力関係を象徴していた。何度も繰り返される米兵の不祥事に沖縄の政治や警察は手も足も口も出せない。民衆の怒りはそのまま亀次郎への期待と変わっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして迎えた沖縄の日本返還、晴れて国会議員となった亀次郎は時の首相・佐藤栄作と対峙する。要点を得ずああでもないこうでもないと、沖縄時代とは打って変わって論理的ではないスピーチを延々続ける亀次郎に、佐藤も他の議員もうんざりした顔を向けている。その戦術は、要求が通るまでいつまでも終わらせないという新たな決意だったのだろうか。

監督  佐古忠彦
出演  瀬長亀次郎
ナンバー  152
オススメ度  ★★★


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