こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イエスタデイ

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友人たちの前で爪弾いた「Yesterday」、みななぜか感心して聞きほれている。両親と老人たちにピアノを弾きながら歌った「Let it be」、でも彼らは目を丸くするばかり。物語は、売れないミュージシャンがビートルズナンバーを自作の歌と騙って公表し、スターの階段を駆け上っていく姿を描く。事故から目覚めたら誰もビートルズを知らなかった。ネットで検索しても存在せず、集めたレコードも消えている。もしかしたらおかしいのは自分ではないかと疑いながらも、覚えている限りの歌詞とメロディを再現しレコーディングする。たちまち “天才” とメディアから注目される一方で、恋人未満の彼女とは距離ができてしまう。歌の出だしで聴衆の心をつかみさわりの部分で感動させるビートルズの名曲は、世代や場所を超えて人々の胸を打つと再認識させられた。

ビートルズの楽曲で脚光を浴びたジャックは、エド・シーランの前座にスカウトされる。ジャックが歌うビートルズの歌は大ブレイク、米国の大物音楽プロデューサーから声がかかる。

借り物の歌で成功していいのか。いつかばれるのではないか。それ以上に故郷に残してきた幼馴染のマネージャー・エリーが気になって仕方がない。ツアーが組まれ大金が動くようになると、もう自分の体は自分だけのものではなく、ましてやエリーのために使う時間はない。不安と不満を抱えながらも選ばれた人間しか味わえない特権を甘んじて享受するジャック。良心や正直さを捨てきれない彼の迷いは、弱さでもあり美徳でもある。金儲けこそ正義と割り切るやり手女プロデューサーと対比することで人生に大切なものをジャックに気づかせようとする構成は、ありふれてはいるがツボにはまっていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

この世界にもビートルズのファンだった人がいる。彼らがジャックに感謝するシーンは、「no Beatles,no life」というこの作品のテーマが最も浮き彫りにされていた。もはやビートルズはバッハやモーツアルト同様、無料公開すべき人類共通の財産なのだ。個人的には「help」の歌詞に改めて共感した。

監督  ダニー・ボイル
出演  ヒメーシュ・パテル/リリー・ジェームズ/ケイト・マッキノン/エド・シーラン
ナンバー  253
オススメ度  ★★*


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