こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラストナイト・イン・ソーホー

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憧れの大都会にやってきた。誰にも煩わされないようひとり暮らしを始めた。そして夜な夜な不思議な世界にどっぷりと浸かる。物語は、デザインを学ぶ女子学生が過去にトリップする幻想にいざなわれるうちに、凶悪な事件に巻き込まれていく過程を描く。きらびやかなネオンに彩られた歓楽街、夢の中で出会った魅惑的なダンサーに自分を重ねるヒロインは、いつしか感情までシンクロさせ始める。だが、彼女の声はダンサーには届かない。それどころか、ダンサーに降りかかる災厄が彼女を追いかけ始める。流麗なカメラワークとヴィヴィッドな色彩、現実と幻覚が入り混じるトリッキーなショットの数々は、彼我の境界線を行き来するような地に足のつかない感覚を体感させてくれる。ショービジネスにおける枕営業が当たり前だった時代、成功を夢見る女たちの悲哀がリアルに再現されていた。

古い建物の屋根裏を借りたエリーは、夢で見た1960年代の女・サンディをイメージしたデザインを先生に褒められる。エリーはサンディの体験を共有するうちに心を蝕まれていく。

歌声を認められステージに立ったサンディだったが、マネージャーのジャックに搾取され始める。もはやダンサーなのか売春婦なのかわからない。サンディの荒んだ気持ちは現実世界のエリーにも伝染し、エリーは昼間でも亡霊に追いかけられる。元々霊感が強いエリーに、サンディは自らの悲劇を伝えたかったのだろか。エリーの妄想はエスカレートし統合失調症を疑われたりする。サンディの苦悩は、きらびやかな業界ほど裏では有象無象がうごめいていて、セクハラをうまく利用した女だけが男世界で成功できるという20世紀の悪習を象徴していた。一方で、セクシーさを武器にするのならば、その危険は想定しておくべきだとは思うが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、事態は意外な方向に転換するが、展開は少し強引。そもそも、秘密を知られたくないのはサンディの方、わざわざエリーを過去に引き込むのは自殺行為だろう。救いを求めていたのは男たちなのだから。。。

監督     エドガー・ライト
出演     アニヤ・テイラー=ジョイ/トーマシン・マッケンジー/マット・スミス/ダイアナ・リグ/シノーブ・カールセン/マイケル・アジャオ/テレンス・スタンプ
ナンバー     227
オススメ度     ★★★


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