こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

架空OL日記

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朝起きるのがつらい。寒い季節になったらなおさら。しかも今日は月曜日、憂鬱な気持ちが高まっていっそ休みにしてしまいたい。物語は、銀行OLたちの心の声と日常を丁寧に追い、彼女たちが抱えるストレスとその解消法に迫る。他愛のない話題で仲間うちの絆を深める。会話が途切れるのを恐れるかのようにどうでもいい話をことさら続け、楽しそうなふりをしている同僚に合わせる。そこにいない上司の悪口で盛り上がり、仲間内を批判したり指導したりするときは細心の注意を払って言葉を選ぶ。女同士の微妙で繊細な友情、なるべくトラブルにならないように、自分が陰口をたたかれないように気を遣う彼女たちの言動がリアルだ。そして、セリフに仕込まれたユーモアと、あまりのショーもなさ、空気を読めなさなどが相乗効果を成し、思わぬ笑いを誘う。

郊外の小さな支店に勤務する “私” は、行内の仲良しと5人組でいつもつるんでいる。噂話やバカ話をしては仕事のストレスを発散させ、ノー残業デーは新開店のレストラン開拓に余念がない。

更衣室だけでなくトイレでも食堂でも彼女たちのネタは尽きない。電源の取り合いを解決したらヒーロー扱い、不愉快な出来事は容疑者探し、大嫌いな上司には陰湿な仕返しをする。特に、小さな事件の犯人をオッサン社員の仕業と決めつけて、“真実ではなく鉾先を求めている” と彼の無実を証明した同僚を嗜めるシーンは、彼女たちが求めているのは情報ではなくコミュニケーションそのものであると教えてくれる。何よりも重要なのは共感と共助、薄くて軽くてすぐ壊れそうなのに、同じ職場にいるうちは平和な共存を望む。女の本能ともいうべき感情をリアルに再現した台詞の数々は秀逸。この程度で人間関係の潤滑油になる彼女たちがうらやましかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

基本的には平穏な人生が理想。それでも、その中に刺激を求め、大それた夢はないけれど毎日を大切にする。そんな日々の営みこそが貴重であると、彼女たちから距離ができた “私” のまなざしが訴えていた。

監督  住田崇
出演  バカリズム/夏帆/臼田あさ美/佐藤玲/山田真歩/三浦透子/シム・ウンギョン/坂井真紀/志田未来/石橋菜津美
ナンバー  48
オススメ度  ★★★*


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