こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デッド・ドント・ダイ

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地軸がぶれ月が奇妙な輝きを増す夜、死人たちは墓場からよみがえる。生前の記憶はわずかに残っているが心はなく、人に噛みついては肉を貪り食う。物語は、小さな田舎町に突如現れたゾンビに対峙する警官の奮闘を追う。老齢の警官は未曽有の事態に目を丸くしながらも職務を粛々と遂行する。まるで予想していたかのごとき若い警官は落ち着いて対処する。さらに、映画の知識でゾンビに対抗する若者や矯正施設の少年少女、森の浮浪者から日本刀を振り回す謎の美女まで、さまざまな人々がゾンビ禍の下でサバイバルを試みる。だが、日ごとに増えるゾンビは群れとなって人家を襲い、倒しても倒しても押し寄せてくる。ありきたりな結末なのか斬新なアイデアが用意されているのか、あまり登場人物の内面に踏み込まない抑制の効いた映像はいかにもジャームッシュ的だ。

ダイナーで内臓を食いちぎられた死体が発見され、警官のクリフとロニーは現場に向かう。ロニーはゾンビの仕業と断定、クリフと共に町を回り危機に備えるよう住民に告知して回る。

墓地だけでなく、留置場で死んだ老婆や葬儀社に安置されていた夫婦の死体までが次々と目を覚ましはじめる。ゾンビにとどめを刺すには頭部を破壊するか切断するか、一風変わった日本趣味を持つ葬儀社のゼルダは日本刀の一閃でゾンビの首を切り落とす。ゼルダに扮したティルダ・スウィントンの洗練された所作と刀の使い方は様式美に満ち、終末を迎えた世界に唯一の希望をもたらしていた。一方でパトロールに出た警察官たちは途中でゾンビたちに囲まれ、中には見知った顔もいるなか己を守るためにゾンビを狩り続ける。だが、圧倒的な数的不利で状況は絶望的、そこでロニーが見せたリアクションが映画的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

町は通信が途絶え孤立する。住民はパニックになる前にゾンビの餌食になり、ほどなくゾンビだらけになるだろう。人間が作り出した文明などいとも簡単に崩壊する、そんなメッセージは今日のコロナウイルス騒動を予言しているかのようだ。

監督  ジム・ジャームッシュ
出演  ビル・マーレイ/アダム・ドライバー/ティルダ・スウィントン/クロエ・セヴィニー/スティーヴ・ブシェーミ/ダニー・グローヴァー/ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ/イギー・ポップ/セレーナ・ゴメス/トム・ウェイツ
ナンバー  65
オススメ度  ★★★


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