こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ぐらんぶる

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気が付くと大学構内で一糸まとわず寝そべっている。周囲は人だかり、慌てて逃げるがなぜこうなったのかまったく思い出せない。同じパターンを何度も繰り返すうちに少しずつ状況を理解し対処法もマスターするが、根本的な解決法は見つからない。物語は、不条理を克服してキャンパスライフを謳歌する男子新入生2人の奮闘を追う。観念して運命を受け入れた。奇人と美女がいるサークルに入った。いつしか異状が日常になり、奇妙な体験にも違和感を覚えなくなっている。常識とは何か、正常とはどういう状態なのか。2人の感覚が徐々に歪んでいく過程は、洗脳されているかのごとき恐ろしさを含んでいる。すべて “vamos” の掛け声ひとつで事態は暴走する、パンツ一丁のマッチョたちが飲み踊りハイになるシーンは、カルト教団のイニシエーションを見ている気分だった。

離島にある大学に入学した伊織は、アニメおたくの耕平と共にダイビングサークルに入部する。裸踊りが大好きな先輩と美人姉妹や巨乳に囲まれるうちに彼らの青春は輝き始める。はずだった。

ある日、布団の上で目覚めた伊織と耕平は抱き合って喜んでいるところを、伊織のいとこ・奈々華に目撃され、2人の関係を疑われる。その他にも、伊織と奈々華の妹・千沙の会話を一部だけ盗み聞きした耕平が勘違いの妄想を膨らませるなど、すれ違うシチュエーションを笑いに昇華する演出はコントを見ているような楽しさ。さらにミスコンに出場したガングロテニスギャル・ケバ子の時代錯誤的なノリには吹き出しそうになった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後も、ダイビング認定証取得のための猛特訓や、伊織と千沙の微妙な距離感など、常夏の島での若者たちの人生は加速する。ただ、その展開は原作を強引につぎはぎしたようなぎこちなさが目立ち、構成にも無理がある。お祭り騒ぎを前面に出して観客を高揚させようとする意図は理解できるし、コロナ自粛要請下の日本の夏にカラ元気を注入したことも評価すべきだろう。それでも、全裸の覚醒をリピートする世界観にはついていけなかった。

監督  英勉
出演  竜星涼/犬飼貴丈/与田祐希/朝比奈彩/小倉優香/菜 石川恋/高嶋政宏
ナンバー  128
オススメ度  ★★


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