こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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きみをさらってどこか遠くに行きたい! 不幸な少女と恋に落ちた少年は精一杯彼女を守ろうとするが、握った手は儚くも警官たちに引き裂かれた。その後も彼らの心の中で、感情はくすぶり続ける。さまざまな経験を積んだ。大人の恋愛もした。それでも本当に好きなのはあの人だけ。物語は、中学時代に出会った男女が、十数年の時をかけて “赤い糸” を手繰り寄せる姿を描く。DVを受け暗く沈んだ目をしていた少女は美しく洗練された女に成長し、別世界の人間になっていた。二度目に再会したときは自分にも背負うモノができていた。もはや完全に別々の道を進んでいて、ふたりの距離は思い出では埋められない。そんな彼らの運命は、男女が結ばれるためには、それにふさわしいタイミングがあると教えてくれる。

花火大会で葵と知り合った漣は、彼女を連れて逃げ、ロッジで一夜を明かす。その後、葵は漣に行く先も告げないまま引っ越し、8年後、幼馴染の結婚式で漣は葵に声をかける。

東京で投資家の愛人になっていた葵は大学にも通い、北海道のチーズ工房に就職した漣とはまったく共通点のない生活を送っている。ぎこちないふたりの会話、でも、葵への思いは少しも変わっていないと漣は確信する。高級車の助手席で涙を流す葵も同じ気持ち、だが引き返す勇気はない。わずかな時間しか言葉を交わさなかったのに、すれ違ってしまったお互いの人生を理解してしまうシーンは、地方と都会、製造業とサービス業、高卒と大卒といった現代社会における格差の芽が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

故郷の役所でまた再会し、ふたりは一緒に過ごした懐かしい場所を回る。もう二度と会えないと思っていたのに、あのときの記憶に浸る。しかし、今度は漣の事情を察した葵が身を引く。そして三たびのめぐり逢い。その間、連絡先も交換せずSNS検索もしない。ネット利用でもっと簡単に相手の情報を得られたはずなのに、最後まで漣と葵は成り行き任せ。スマホ世代なのに電子機器に一切頼らない恋人たちの邂逅は、非現実的だが新鮮だった。

監督  瀬々敬久
出演  菅田将暉/小松菜奈/山本美月/高杉真宙/馬場ふみか/倍賞美津子/二階堂ふみ/成田凌/斎藤工/榮倉奈々
ナンバー  129
オススメ度  ★★★


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