こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アダムス・ファミリー

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少し特殊な能力はあるけれど、少し奇妙な格好をしているけれど、少し違った価値観を持っているけれど、理性も感情も人並みにある。ただひっそりと “不幸” に浸っていたいだけなのに、人々は放っておいてくれない。物語は、人里離れた山頂に安息の地を見つけたモンスターの家族が、経済発展の波に追い立てられながらも自らのアイデンティティを守ろうとする姿を描く。町にやってきた住人と仲良くなりたいのに、開発担当者は一家の住む屋敷が邪魔で仕方ない。あの手この手で嫌がらせを仕掛けてくるが、一家には大切なイベントが控えている。そんななか生まれた友情。人もモンスターも、外見ではない、中身が重要。使い古されたテーマだが、いまだ人種差別問題が多発している現代、人間とモンスターの対立と和解は、偏見や思い込みこそが無益な争いを生み悲劇の原因になっていると教えてくれる。

ゴメス夫妻は結婚式当日村人に襲撃され廃精神病院に住み着く。子供を2人もうけ平穏な日々を送ってきたが、長女のウェンズデーが外界に興味を持ち、開発業者の娘・パーカーと友達になる。

いじめられっ子だったパーカーを助けたことから彼らは急接近。母・マーゴの干渉に息苦しさを覚えていたパーカーはマイペースなウェンズデーの影響を受け、ウェンズデーもまた彩に満ちたパーカーに憧れる。中学生の2人とは対照的に、マーゴはゴメスたちを厄介者と認定し、なんとか追い出して町のクオリティを保とうとする。このあたり、誤った思想は大人から子供に伝わり、利害関係が絡まると、虐げられるのは常に弱い方であると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ゴメスたちが交渉に応じないと知ると、マーゴは策を弄して住民をフェイク情報で扇動し実力行使に出る。誰にも迷惑をかけず妻子と一族の平和と安寧に暮らしたいというゴメスの願いもマーゴには通じない。ユニークなキャラクターと精緻なCGアニメはこの作品のひねくれた世界観を細部まで再現し、辛辣かつ深刻な社会的政治的メッセージをうまくオブラートに包んでいた。

監督  コンラッド・ヴァーノン/グレッグ・ティアナン
出演  オスカー・アイザック/シャーリーズ・セロン/クロエ・グレース・モレッツ/フィン・ウルフハード/ベット・ミドラー
ナンバー  155
オススメ度  ★★★


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