こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

KCIA 南山の部長たち

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共に理想を追い、革命のために命を懸け、全身全霊で仕えてきた相手に見捨てられる。忠誠心は粉々に砕け散り、残っているのは憎しみばかり。物語は、1979年に起きた暗殺事件の真実に迫る。大統領に次ぐ権力を持つ男がなぜ反旗を翻したのか。人権よりも治安を優先する大統領はもはや瀬戸際。心地よい言葉しか発しない側近が重用され、現実を受け入れろと直訴するほど遠ざけられる。長期にわたる統治で末期的症状となった政権の中枢で主人公が見たものは、生き残るためにはどんな汚い手も使う男たちの醜い葛藤。自分もまたその中のひとりであることは自覚している。それでも、祖国と国民の生活を少しでも良くしようと彼は奔走する。そんな、決して弱音を吐けない男たちの “やせ我慢” が印象的だった。

中央情報部長・キムは、腐敗した朴大統領を米国で告発したパク前部長の対処を命じられる。だが、進展は芳しくなく、大統領は次第に警備部長のクァクに重大事の相談をするようになる。

キムもパク前部長も軍人時代から朴大統領を支えた身。敵対する立場になっても、パクはキムに信頼を置いている。また、キムが朴大統領と2人だけで酒杯をかわし「あのころはよかった」などとしみじみとつぶやくシーンなど、同じ釜の飯を食った仲間の絆の強さを象徴する。それでも、過去の思い出よりも今を生き抜かなければならない政治の世界。追い詰められるキム、部下を切らなければならない大統領、命を狙われるパク前部長、それぞれに苦悩を抱えた男たちが究極の選択を迫られていく過程はひりひりする緊迫感に満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

内乱を抑えきれなくなった大統領は強硬手段に出ようとする。阻止するにはキム自身が動くしかない。準備した拳銃が弾詰まりを起こしたり、クァクの思わぬ反撃にあったりと、暗殺はフィクションのようにはうまくいかない。そのあたり、キムの不安や焦燥もリアルに再現されていた。なにより、今は見る影もなく凋落した「サンデー毎日」が韓国を揺るがすスクープを飛ばしていたのに驚いた。

監督  ウ・ミンホ
出演  イ・ビョンホン/イ・ソンミン/クァク・ドウォン /イ・ヒジュン/キム・ソジン
ナンバー  16
オススメ度  ★★★


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