こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Eggs 選ばれたい私たち

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ハワイやマレーシアに行って処置を受けたら後はのんびりとバカンスを満喫できる。費用は相手持ち、謝礼ももらえるうまい話。だが、本心では出産から距離を置いた自分でも血のつながった子孫を残したいと思っている。物語は、卵子提供者に応募した女たちの葛藤を追う。結婚に興味を持てないOLは代わり映えのしない日常を変えたい。恋人にフラれたばかりのレズビアン女は自意識過剰。同居を始めた2人はお互いに心の壁を低くしようとはせず、息苦しい思いを抱えたまま狭い部屋で寝食を共にする。卵子提供者になるためにはさまざまな条件をクリアしなければならないが、応募者にできることはない。それでも、選ばれようと前向きになる彼女たちに、夢を持って生きられない現代社会の閉塞感が凝縮されていた。

卵子提供者面接会場で再会したいとこ同士の純子と葵。行く当てのない葵は純子の部屋に転がり込む。純子はレズビアンの葵に警戒心を隠せないが、それ以上に葵のだらしなさが不満だった。

プリンを勝手に食べる。トイレの照明を消さない。一応社会人としてきちんと生活している純子は、葵の「選民意識」が鼻につく。そんな変化も純子にはいい刺激なのか会社の同僚に肌がきれいになったと言われたりする。だが、居候なのにナプキン代30円を請求する図々しさにはあきれ返る。ところが葵への不快さを少しでも態度に出すと彼女は敏感に嗅ぎつけ、「やっぱり差別している」と無敵の言葉で純子を黙らせる。“レズビアンは特別な存在” と優越感に浸り、指摘されると被害者ぶる。レズビアンがなぜ白眼視されるのか、女性監督ならではの視点が新鮮だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

便器に広がるどろりとした経血。ナプキンを張り付けた下着。頭痛や腹痛といった不快感。女である以上、まだしばらくはその面倒くささから逃れられない。一生の間に生理用品にかかるコストを葵は計算する。その総計が高いか安いかは別にして、生理について男がきちんと理解することがジェンダーギャップ解消の第一歩であると感じた。

監督  川崎僚
出演  寺坂光恵/川合空/三坂知絵子/新津ちせ
ナンバー  57
オススメ度  ★★*


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