こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゾッキ

f:id:otello:20210406092807j:plain

あてのない旅に出た男は漁港で伝言を頼まれる。やっと親友ができた高校生は嘘をつき通さなければならない。深夜の高校に盗みに入った父に付き合った少年は恐怖の体験をする。レンタルDVD店で働く若者は世界とのつながりを知る。映画は、小さな町に住む普通の人々のありふれた日常に潜む秘密と嘘、そして不可解な出来事を探り、人間の本質に迫ろうとする。誰もがたくさんの秘密を抱えて生きている。秘密がすべてなくなってしまうと死んでしまう。ここでは秘密こそが人生のモチベーションなのだ。ところが順不同に構成されたバラバラなエピソードは何らかのつながりがあるわけでもなく、訳ありげに張られた伏線も回収される見込みはない。かといって笑いを作りこんでいるわけでもなく脱力系のユルさもない。ただただ退屈な作品だった。

寝袋だけを荷台に括り付け自転車の旅に出た藤村は、隣町の漁港でおっさんに声をかけられおっさんの誕生日パーティに飛び入り参加する。そこに刑務所出所したばかりの男が顔を出す。

唯一、高校生同士の友情と信頼が生んだ奇妙な運命を描いた牧田と伴のエピソードが興味を持てた。変わり者の伴は会ったこともない牧田の姉に恋し執拗に牧田に付きまとうのだが、実は牧田に姉はいない。伴を失望させないために牧田は様々な嘘をつくが、その嘘が伴を幸せにする。牧田は結局自らの嘘に縛り続けられるのだが、彼もまたそのおかげで貴重な出会いをする。ディテールはまったくリアリティを無視しているが、一途な伴と必死な牧田の思惑が複雑に交差する展開は少しだけ笑えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その他のエピソードにも教訓やオチがあるわけでもなく、冗漫なシーンが繰り返されるばかり。校舎に現れる白塗りの幽霊をマネキンで代用するなど、もはや素人レベルだ。サンドバッグを吊るすのに物干しざお台では強度が足りないことくらいボクシング経験者ならわかるだろう。漫画で読むときは気にならないのかもしれないが、映像化するのならもっと脚本の段階で細部を検討してほしかった。

監督  竹中直人/山田孝之/齊藤工
出演  吉岡里帆/鈴木福/満島真之介/柳ゆり菜/ピエール瀧/森優作/九条ジョー/木竜麻生/竹原ピストル/潤浩/石坂浩二/松田龍平/國村隼
ナンバー  58
オススメ度  ★★


↓公式サイト↓
https://zokki.jp/