こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

1秒先の彼女

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目覚めると月曜日になっている。日曜日は “馬鹿ップル” コンテストに出場する予定だった。なのにすっかり記憶が抜け落ちている。そして身に覚えのない日焼け。物語は、何事も先走ってしまう女が、失くした1日を探す過程を追う。見かけは悪くないのにせっかちな性格のせいでなかなか男ができない。毎日切手を買いに来る客はいるけれど、全然タイプではない。そんな時出会った長身イケメンのダンス講師は、栄養バランスを考えた弁当を持ってきてくれたりデート中も笑わせてくれたりする。だがその幸せも空白の1日ですべて消し飛んでしまう。何が起きたのか? なぜ起きたのか? 誰かの仕業なのか? 日々自室と職場の往復ばかり、楽しみはラジオのトーク番組だけという非リア充30女の日常がコミカルに再現されていた。

郵便局に勤めるシャオチーは七夕バレンタインを前に焦っていた。公園でタイダンスの公開レッスンに参加すると、講師のリウに声を掛けられる。リウはその後毎日シャオチーの職場に現れる。

夢にまで見たラブラブ生活、外見のいい男に口説かれる幸福をかみしめるシャオチー。今までに体験したことのない洗練されたさりげない気遣いに、シャオチーはすっかりのぼせ上ってしまう。なのに、消えた1日を境に彼はばったりと姿を見せなくなる。自分はいったい何をしてしまったのか、クローゼットの中から現れたヤモリとの会話は、思い出の詰まったものほど失くしてから大切だったことに気づくという彼女の人生を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、他人からワンテンポ遅いグアタイは、バスの運転手をしながら毎日シャオチーの窓口に手紙を出しに行く。後半はグアタイの秘密とシャオチーとの関係が明かされていく。時が止まった世界をひとりで旅をするグアタイの表情は、願いがかなった子供のようでもあり、喜びを他人と分かち合えないさみしさもみせる。少年時代から長い間ずっと探し続けていた彼女への思いが届くシーンは、七夕こそ恋人たちを祝福するにふさわしいと思わせてくれる。

監督  チェン・ユーシュン
出演  リウ・グァンティン/リー・ペイユー/ダンカン・チョウ/ヘイ・ジャアジャア
ナンバー  118
オススメ度  ★★★*


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