こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

夏への扉 キミのいる未来へ

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すべてを失った絶望の末に長い眠りについた。それでも、目覚めた世界で待ってくれている人がいた。物語は、30年におよぶ人口冬眠を経て真実にたどりついた男の愛と冒険を追う。人生を賭けてきた研究を横取りされた。愛する女も炎に包まれた。思い残したことは山ほどあるが、もう運命は変えられない。そしてたどり着いた未来、世の中の風景はすっかり変化を遂げたが、人の心はそれほど変わっていななかった。むしろ、AIロボットにさえ心が芽生えているかのよう。あらゆる支払いはキャッシュレス、タクシーは自動運転になり、社会のいたるところでAIロボットが人間の代わりに働いている。そんな数年後の日常風景が楽しい。一方で、設定はもはや手あかのついたものばかり、もう少しオリジナルなアイデアを見たかった。

1995年、ロボット科学者・宗一郎は新たな研究の成果を発表するが、裏切りに会った上に、最愛の璃子も姿を消してしまう。2025年、宗一郎は介護ロボット・ピートと共に空白の過去を埋めようとする。

ピートは宗一郎が開発したプラズマ蓄電池を搭載していて、少なくとも自分の研究が無駄になっていなかったと宗一郎は知る。ピートは好奇心が強いというバグがあり、プログラムされていないのに宗一郎に協力する。2人は悲劇の物理学者・遠井に会いに行く。このあたりの展開は、先の先まで予想ができてしまう。そもそも20世紀のタイムトラベルものから内容も表現もまったく進歩しておらず、脚本は深く練られていない。もっと宗一郎の璃子に対する思いを前面に出して切ないラブストーリーに昇華するなどの工夫をすべきだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

遠井が密かに完成させていたタイムマシンに乗って、宗一郎は1995年に戻る。もちろん歴史に改変を加えるわけだが、ここでも当然身の上に降りかかる出来事を知っている宗一郎は、己に都合の良い方にばかり手を加えていく。今までに先人がやりつくした方法論を踏襲するなら、もっとディテールを豊かに再現して、リアリティを持たせてほしかった。

監督  三木孝浩
出演  山崎賢人/清原果耶/藤木直人/夏菜/眞島秀和/浜野謙太/田口トモロヲ/原田泰造
ナンバー  115
オススメ度  ★★


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