こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

竜とそばかすの姫

f:id:otello:20210719115758j:plain

歌が好きなのに人前では声が出ない。同性にも人気の女子の前では卑屈な態度になる。幼馴染の男子には気持ちと逆の言動をとってしまう。物語は、母の死をきっかけに泣き虫のおとなしい性格になってしまった女子高生が仮想空間で瞬く間にスーパースターになり、傷ついた竜のアバターを救おうとする過程を追う。現実世界とは180度違う、多くの人に認められ、注目され、称賛され、崇められ存在となった彼女の秘密を知っているのは親友だけ。自らの作詞をメロディに乗せ圧倒的なハイキーで絶唱するヒロインの歌は、聴衆の共感を呼び心を震わせ熱狂させる。アバターの大群衆を前に彼女が孤独と切なさと愛を表現するシーンは、アニメならではの細部にまでこだわった情報量で、視覚と聴覚のみならずあらゆる感覚を刺激してくれる。

仮想空間Uの人気歌姫・ベルのライブにお尋ね者の竜が乱入、「正義」を押し売りする自警団と戦う。ベルは竜が救いを求めていることを見抜き、竜の行方を追ううちに彼が隠れ住む城を見つける。

リアルでのベルの本体・鈴は相変わらずひとりでは何もできない。父とは距離を取り、思いを寄せるしのぶくんに心配されると素直になれない。こんな自分を変えたいのはわかっているのにどうしたらいいのかわからない。ベルになっている時だけは自由で大胆で勇気が湧いてくるのに、そのギャップがなかなか埋められないのがもどかしい。それでも親友に背中を押され、自らの意志で行動する大切さを学ぶうちに鈴は少しずつ強くなっていく。彼女の成長は、人生は他人任せにするのではなく己の力で前に進むものだと教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ベルは竜を見つけ、彼の背中の傷は本体が発するSOSだと知る。鈴の親友は天才的IT技術を駆使して、わずかなヒントを手掛かりに竜の本体に近づいていく。「美女と野獣」的設定は21世紀の若者向けに洗練されていたが、一方で50億もアカウントの中から見つけた相手が夜行バスで行ける距離で暮らしていたというのはちょっと世間が狭すぎないだろうか。

監督  細田守
出演  中村佳穂/成田凌/染谷将太/玉城ティナ
ナンバー  131
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/