妊娠してしまった。母親になる自信はない。親には黙っていたい。中絶するには大都会に行かなければならない。物語は、17歳の女子高生が堕胎を決意し、いとこに付き添われて手術を受ける過程を描く。相談できる相手はいとこだけ、心細い時にはいつもそばにいてくれる。バイト先から盗んだカネで長距離バスに飛び乗ったけれど、計画通りにはことは進まない。初めて乗る地下鉄、窒息しそうなほどの人いきれ。大きな荷物を引きずる2人は、クリニックを追い出された後行く当てもなく繁華街を彷徨う。大人を頼りたくない。でも彼女たちだけではなにもできない。放っておいてほしいけれど、かまってもらいたいとも思っている。もやもやした自分の気持ちが自分でもよくわからない。そんな息苦しいほどの切実な感情がリアルに再現されていた。
妊娠10週と診断されたオータムは、スカイラーに付き添われて手術に両親の同意が必要のないNYに向かう。そこで18週と告げられ、特別な処置をするために翌日改めて受診する羽目になる。
翌日、出直して前段階処理を受け、さらにもう1回クリニックに行かなければならない。その間、中絶の意思確認のために命の大切さを学ぶ機会を与えられたり、性体験を根掘り葉掘り聞かれたりする。ひとつひとつの質問に面倒くさいと思いながらも、今まで大人にこれほど真剣に話を聞いてもらった経験のないオータムは心を開いていく。大人にもうもっと頼ってもいいのに、もっと甘えてもいいのに、つい強がってしまうオータムの不器用さがいつしかいとおしくなる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
日帰りで済むと思っていたので資金は乏しい。バスでスカイラーに声をかけてきた男を呼びだして、おごってもらったりカネを借りたりする。予期せぬ妊娠とか気の進まない中絶とか、楽しいはずの高校生活は不幸なことばかり。ついつい仏頂面になってしまうオータムだが、それでも彼女に親切にしてくれる人もたくさんいる。そこに気づいたオータムは少しだけ世界を信じられるようになったに違いない。
監督 エリザ・ヒットマン
出演 シドニー・フラニガン/タリア・ライダー/セオドア・ペレリン/ライアン・エッゴールド/シャロン・バン・エッテン
ナンバー 128
オススメ度 ★★★
↓公式サイト↓
https://17hitomi-movie.jp/