こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

17歳の瞳に映る世界

f:id:otello:20210720095945j:plain

妊娠してしまった。母親になる自信はない。親には黙っていたい。中絶するには大都会に行かなければならない。物語は、17歳の女子高生が堕胎を決意し、いとこに付き添われて手術を受ける過程を描く。相談できる相手はいとこだけ、心細い時にはいつもそばにいてくれる。バイト先から盗んだカネで長距離バスに飛び乗ったけれど、計画通りにはことは進まない。初めて乗る地下鉄、窒息しそうなほどの人いきれ。大きな荷物を引きずる2人は、クリニックを追い出された後行く当てもなく繁華街を彷徨う。大人を頼りたくない。でも彼女たちだけではなにもできない。放っておいてほしいけれど、かまってもらいたいとも思っている。もやもやした自分の気持ちが自分でもよくわからない。そんな息苦しいほどの切実な感情がリアルに再現されていた。

妊娠10週と診断されたオータムは、スカイラーに付き添われて手術に両親の同意が必要のないNYに向かう。そこで18週と告げられ、特別な処置をするために翌日改めて受診する羽目になる。

翌日、出直して前段階処理を受け、さらにもう1回クリニックに行かなければならない。その間、中絶の意思確認のために命の大切さを学ぶ機会を与えられたり、性体験を根掘り葉掘り聞かれたりする。ひとつひとつの質問に面倒くさいと思いながらも、今まで大人にこれほど真剣に話を聞いてもらった経験のないオータムは心を開いていく。大人にもうもっと頼ってもいいのに、もっと甘えてもいいのに、つい強がってしまうオータムの不器用さがいつしかいとおしくなる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

日帰りで済むと思っていたので資金は乏しい。バスでスカイラーに声をかけてきた男を呼びだして、おごってもらったりカネを借りたりする。予期せぬ妊娠とか気の進まない中絶とか、楽しいはずの高校生活は不幸なことばかり。ついつい仏頂面になってしまうオータムだが、それでも彼女に親切にしてくれる人もたくさんいる。そこに気づいたオータムは少しだけ世界を信じられるようになったに違いない。

監督  エリザ・ヒットマン
出演  シドニー・フラニガン/タリア・ライダー/セオドア・ペレリン/ライアン・エッゴールド/シャロン・バン・エッテン
ナンバー  128
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
https://17hitomi-movie.jp/