こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

忌怪島 きかいじま

現実世界で他者とつながっていなくても、悩みを打ち明ける友人がいなくても、仮想空間なら快適な人間関係が構築できる。そんな発想から進められる研究に、怨念という強力なバグが現れる。物語は、小さな島でヴァーチャルリアリティを研究する若者たちが直面する恐怖を描く。島の海やビーチ、山や建物といった風景をディテール豊かに再現したデジタルの世界で、島の禁忌となっていた悪霊までがよみがえってしまった。その強烈な怒りと憎しみは自律し暴走し現実世界との壁を軽々と乗り越えるようになる。一方で、村八分にされている寡黙な老人は大きな秘密を抱えている。テクノロジーの急速な進化に合わせて悪霊たちも自らの在り方を変えていく、その柔軟さは社会の急激なDX化も強い意志があれば対応できると訴えていた。

孤島の研究室に赴任した片岡は同時刻に死亡した前任者・井出と被験者・園田の脳データを精査する。モニターに復元された彼らの記憶には、赤い服を着たおぞましい姿の女が記録されていた。

島で迷子になった片岡は死亡した園田の娘・環と知り合い、島のユタもとを訪ねる。運命を言い当てられた2人は協力して井出と園田の正確な死因を探ろうとする。その過程で、この島にはかつてなぶり殺しにされた女・イマジョの深い呪いが染みついていると聞かされる。非科学的なものを一切信じない片岡が、プログラムのバグとして実体を手に入れてしまったイマジョから仮想空間だけでなく現実世界でも遭遇し命を狙われるシーンは、もはやどちらで起きていることが真実なのかを見定めるのは無意味だと教えてくれる。目の前で起きたと思っていることなど所詮は脳がそう認識しただけの話なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

封印されていたイマジョの恨みは実体を得て研究員や村人襲い始める。止めるには現実世界と仮想空間の出入り口である海の鳥居を破壊しなければならない。片岡は対策を練るが狡知に長けたイマジョは先手を取る。本体とアバターが入り乱れるクライマックスは、ホラー映画の未来を暗示していた。

監督     清水崇
出演     西畑大吾/生駒里奈/平岡祐太/水石亜飛夢/川添野愛/笹野高史/山本美月
ナンバー     113
オススメ度     ★★*


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