こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。

f:id:otello:20211006095115j:plain

聖書に右手を乗せて真実のみを語ると宣誓する。それは、法廷は神の領域と判事が認めているということ。ならば、悪魔の存在も否定しきれない。物語は、市民を惨殺した青年が “悪魔に憑依されていた” と主張、無罪を訴えた事件の真相を追う。根拠は有名な悪魔祓い師夫妻の情報のみ、彼らには警察がさじを投げた事件を解明した実績がある。青年とも過去の事件で知己を得て人となりは知っている。彼は正義感が強く本当に心身を乗っ取られていたに違いない。そう考えた夫妻は、推理を裏付けるために調査を開始する。悪魔祓いを受ける少年が身をよじらせた後サソリのように背中を曲げ足の間から顔を出すシーンは、サーカスの曲芸を見ているよう。「エクソシスト」の少女以上に強烈なインパクトを放つ。

除霊した屋敷の床下から悪魔崇拝のシンボルを見つけたロレインとエドは、犬舎管理人殺人事件の犯人・アーニーに黒魔術の呪いがかけられたと確信、類似事件を解決して警察の信頼を得る。

悪魔はなぜ人間に憑りつき超常現象を起こすのか。悪魔崇拝に詳しい元神父を訪ねたエドとロレインは、“悪魔はただ混沌と絶望を見たいだけ” という答えを得る。神を憎み、神を信じる人間に悪事を働くことで神の価値を貶めるのが目的。人間が恐れるからこそ、その心の隙に悪魔が入り込むのだ。小さな田舎町で育ったアーニーは信心深かったのだろう。恋人の弟が苦しんでいるのを黙って見ていられない。その自己犠牲が産んだ悲劇とはいえ、そこには邪悪さよりも卑屈な寂しがり屋という悪魔の一面しか見えてこない。悪魔の本質を知ると、そのスケールの小ささは恐れるに足らず。むしろ人間が抱く怒りや憎しみの方がよほど害をなすとこの作品は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて悪魔に魂を奪われた魔女の呪いが発動、収監中のアーニーの身に異常が起きる。さらに祭壇を巡ってロレインとエドがピンチに陥ったりする。短いショットとショッキングなサウンドで再現された映像は、ホラーの定石通りに感覚を刺激する。

監督     マイケル・チャベス
出演     パトリック・ウィルソン/ベラ・ファーミガ/ルアイリ・オコナー/サラ・キャサリン・フック/ジュリアン・ヒリアード
ナンバー     177
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/shiryoukan-muzai/