こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

CUBE 一度入ったら、最後

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目覚めるとフラクタルな立方体の中にいる。前後左右上下に頑丈なドアがついている。見知らぬ人々も一緒にいる。誰もが、なぜ自分がここに連れてこられた理由がわからない。物語は、狭い空間に閉じ込められた6人の男女が様々なトラップをかいくぐって出口を探す姿を描く。同じ部屋にとどまっていてもなんの解決にもならない。とりあえず安全を確かめて隣の部屋に移動する。部屋の配列には素数が関係しているらしい。だが。気が付くと元の部屋に戻っていたりもする。これはいったい罰なのか。どうしてこんな状況に陥ったのか。大きな意思が働いているのか。部屋から部屋へ移動する過程で、彼らは過去の言動を見つめなおしていく。そう、これは脱出口にたどり着くまでの道のりであるとともに、己が歩んできた人生を問い直す旅なのだ。

裕一、真司、麻子、千陽が途方に暮れている部屋に井手がやってくる。井手はひもの先に結んだ靴でトラップの有無を確かめながら勝手に進んでいく。しばらくして安東と名乗る男と合流する。

井手は経験豊かでトラップのパターンを熟知している上に何らかの秘密を知っているようだが、多くを語らず他のメンバーには命令口調で接する。裕一は千陽とともにトラップ部屋のパターンと三次元座標を解析する。真司は役に立たず安東は不機嫌に怒鳴っているだけ。麻子は冷静だが何を考えているかわからない。このキャラ設定だけで誰が脱落していくのか大体の予想はつく。胴体を四角くくりぬかれたり、炎を噴射されたり、ブレードドリルが回転したり、レーザーで照射されたりと、アイデア豊富なトラップの数々は、その餌食になる人間が変わり果てた肉片になるところまで予想ができ、不快感を盛り上げる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

部屋の外で何かが動いている音を察知した裕一は、一部屋ずつ座標を計算しつつ移動して出口に近づく。そしてトラウマと真正面から向き合い、何をすべきかを悟る。わかりやすい種明かしなどせず、ほとんどの謎を謎のまま放置する潔さはかえって心地よかった。

監督     清水康彦
出演     菅田将暉/杏/岡田将生/柄本時生/田代輝/山時聡真/斎藤工/吉田鋼太郎
ナンバー     195
オススメ度     ★★*


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