こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

そして、バトンは渡された

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産んでくれた母はよく知らないけれど、実の父にはかわいがってもらった。継母は全身で受け入れてくれたのに、ある日突然消えてしまった。2人目の父も3人目の父もなぜか血のつながらない自分を我が子のようにかわいがってくれる。物語は、死別再婚離婚再々婚別居と大人たちの都合に振り回されながらも、やさしさに満ちた人格に育った娘の半生を描く。少女の親になる人々は大きな心と理解力を持った善人ばかり。ひとりっ子で友達も少ないからだろう、その環境に疑問を持たないまま成長していく彼女の視点から見た世界とはいえ、デフォルメされたキャラクターの数々は軽いコメディタッチで少しミステリアス。DVもモラハラも一切ない夫婦・親子関係のなかでヒロインが大切に慈しまれる姿は、手の届かないユートピアにいるようだった。

泣き虫のみぃたんは父の再婚で梨花という母を得る。だが父は単身ブラジルに渡航、みぃたんと梨花の2人暮らしが始まる。ほどなく梨花はみぃたんを連れ富豪の屋敷に転がり込む。

毎日の食事・キャラ弁づくりだけでなくピアノの防音室まで用意するという優子の継父・森宮。高校卒業を控えた優子は森宮の押しつけがましいまでの思いに守られ、つらい時でも笑顔を絶やさないよう心掛けている。だが、同級生のピアニスト・早瀬に心の中を見透かされ、逆に気になって仕方がない。二言目には「父親として」と口にする森宮は常に優子の幸せを最優先させるが、早瀬の母は正反対。対照的な境遇ゆえに惹かれ合うふたりは、お互いに補完関係がある方が深く結びつくと訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

みぃたんと優子の秘密が明らかになると、梨花の人生がにわかにクローズアップされる。なぜ梨花のわがままを男たちは許したのか、なぜ梨花はみぃたんをあれほどまでに溺愛したのか。早瀬との結婚を決意した優子は、今までかかわった “父親たち” を訪ね歩くうちに真実を知る。その過程は、世界は常に善意と愛情にあふれ、必ず誰かが見守っていてくれるという、人生を肯定する気持ちにさせてくれる。

監督     前田哲
出演     永野芽郁/田中圭/岡田健史/稲垣来泉/石原さとみ/大森南朋/市村正親
ナンバー     197
オススメ度     ★★*


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