こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クライ・マッチョ

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何十年も前から時代遅れになっているのに、変わらないまま意地を貫いている。かつては誰もが認めるヒーローだったのに、今はひとり寂しく暮らしている。物語は、虐待母から逃げ出した少年と、彼を父親の元に送り届けようとする老人の逃避行を描く。自分を一人前に扱う老人に、少年は生き方を学ぼうとする。まだ性根まで腐っていな少年に、老人は生きる意味を見出そうとする。見渡す限り続く乾燥した荒野、おんぼろ自動車で進む細い道には展望が見えない。先の短い老人とまだまだ未来がある少年は、それでもその先に希望があると信じている。女子供にはやさしく、脅迫には屈しない。家畜とふれあい、野宿も厭わない。カウボーイという米国西部の象徴を体現する老人は、失われた価値観へのノスタルジーに満ちていた。ニワトリも飼いならせば主人の危機を救うのか?

メキシコシティのストリート、闘鶏場にいるラファを探し出したマイクは、彼を連れてテキサスに戻ろうとする。ラファの母が放った追手に追いつかれるが、2人は巧みに逃れる。

ラファはマッチョと名付けた闘鶏を相棒にしている。マイクはラファだけでなくマッチョもうまく手名付ける。さらに警官の目から逃れるために入ったカフェレストランの女主人・マルタにも一目ぼれされる。ロデオで落馬、妻子を交通事故で亡くしたマイクは、きっと死んだような日々を送ってきたはず。ラファとの出会いは人生の最後に訪れた僥倖、だがマイクはただ淡々とそれを受け入れる。栄光も絶望も、人が一生のうちで経験することはたいてい体験してきた。無感動なのではない、現実と折り合いをつける術を知っているのだ。老いの先にある成熟、感情を押し殺したマイクの背中は枯れた味わいに満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、目的のためとはいえクルマを盗んでもいいはずもなく、もっとスマートなやり方で逃走を続けるべきだろう。言葉が通じないマルタとの仲が急進展するのも、話ができすぎている。そのあたり、もう少しリアリティとディテールが欲しかった。

監督     クリント・イーストウッド
出演     クリント・イーストウッド/エドゥアルド・ミネット/ナタリア・トラベン/ドワイト・ヨーカム/フェルナンダ・ウレホラ
ナンバー     10
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/crymacho-movie/