こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モリコーネ 映画が恋した音楽家

どこからともなくやってきた凄腕の流れ者、その孤独とプライドを口笛で表現した「荒野の用心棒」。不吉な前触れと胸騒ぎするのに、心は妙に高揚しているかのような「続・夕陽のガンマン」。善人でもヒーローでもない、下世話な名誉には興味はなく、むしろ欲望に正直な男の感情を表現したかのような音楽は一度聞いただけで強烈なインパクトを残す。やがて、映画自体は上映される機会がなくなっても、そのテーマ曲はさまざまなシーンで再現され、引用され、映像の記憶を呼び覚ます。まだまだ音楽が映像の付属物ではなく単独でも自己主張していた時代、オーケストラの楽器以外を効果的に使いこなした旋律と斬新な構成は、新たな境地を開いた。いかにもタランティーノが好みそうな曲想だが、それはそこに人間の真実があるからだろう。

トランペット奏者の息子だったモリコーネは自身も音楽院でトランペットを専攻していたが、作曲クラスに転向、卒業後は軍楽隊に入る。60年代からは映画音楽に進出する。

70年代に入ると、それまで一段下に見られ、モリコーネ本人もそう考えていた映画音楽に本格的に取り組みその地位を向上させる。大作話題作アート系と仕事は途絶えない。そして80年代「ニュー・シネマ・パラダイス」で金字塔を打ち立てる。余情あふれる曲想はノスタルジックかつ繊細で、テーマ曲を聴いただけで少年と老人の友情が鮮やかに脳裏に再現される。きっとこの映画を知らなくてもメロディに聞き覚えがあるという人は世界中に何億人もいるだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その間何度も米アカデミー賞にノミネートされるがオスカー像を手にすることができない。そんな彼にC・イーストウッドが名誉賞を手渡すシーンは、ハリウッドからの敬意と謝罪に満ちていて印象的だった。そして「ヘイトフル・エイト」での初受賞。肚に一物抱えたならず者たちが卑劣な騙し合い殺し合いを繰り広げる内容は、いかにもゲスな趣の戦慄で彩られる。初期3部作こそが「原点」にして「頂点」だと知る監督の功績だろう。

監督     ジュゼッペ・トルナトーレ
出演     エンニオ・モリコーネ/クリント・イーストウッド/クエンティン・タランティーノ/ハンス・ジマー/ダリオ・アルジェント/テレンス・マリック/ブルース・スプリングスティーン/ローランド・ジョフィ/リナ・ウェルトミューラー
ナンバー     7
オススメ度     ★★★*


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