こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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雑踏を全力疾走し、障害物を飛び越え、銃撃し、格闘する。高度な訓練を受けた女スパイたちは鍛え上げられた男たちを手玉に取り次々に倒していく。物語は、あらゆるデジタル機器を狂わせる威力を持ったデバイスを巡る5か国の女たちの攻防を描く。テロリストの手に渡ると世界が破滅する。男たちは当てにならない。女スパイたちが、敵と思っていた相手と手を組み、共に戦っていくうちに信頼を育んでいく過程は、もはやジェンダー平等を唱えるのは時代遅れと思わせる。いまや女スパイにハニートラップは求めない。熟練の彼女たちは銃器の扱いや格闘技も男たちより一枚上、逃げる敵を追い、襲撃してくるテロリストを迎え撃つ姿はスーパーヒーローのようだ。母性に抗えず弱点となってしまうキャラを演じたペネロペ・クルスがかえって印象に残った。

取引のためにパリに赴いたCIAのメイスは、ドイツのエージェント・マリーにカネを奪われた上、デバイスを失い、相棒のニックまで殺される。メイスはMI6のディジに協力を乞う。

マリーもデバイスを追っていて、さらに心理学者のグラシーもメイスに合流する。共通の目的ができた4人は協力で合意、デバイスを追ってマラケッシュに赴く。むせかえるような熱気と人込み、イスラム文明に迷いこんだ異教徒の女たちは、スキンヘッドのあごひげという似たような風貌のテロリストグループを追う。さまざまなトラブルを機転で制し、テロリストからデバイスの奪取を試みる。その後、中国のエージェント・リンがチーム入りするプロセスはちょっと強引だが、美女5人のそろい踏みは圧巻だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、彼女たちが体を張るほど「女の身体能力」の限界が露呈する。図らずも「007」「ボーン」「MI」といった本格スパイアクションに比べ、スピードにも重量感にも欠ける縮小再生産的映像になってしまった。銃器や爆発物の取り扱いも雑で緊迫感もイマイチ。もちろん男女は平等であるべきだが、肉体的な性差があることは認めた上で、もっと違ったアプローチをしてほしかった。

監督     サイモン・キンバーグ
出演     ジェシカ・チャステイン/ペネロペ・クルス/ファン・ビン/ダイアン・クルーガー/ルピタ・ニョンゴ/エドガー・ラミレス/セバスチャン・スタン
ナンバー     23
オススメ度     ★★*


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