上昇気流を主翼でとらえ、旋回しながら雲の上まで突き抜ける。真っ青な空は手が届くほど近く、遠くにそびえる山並みはジオラマを見ているよう。物語は、大学の航空部でグライダーを操縦する喜びに出会った女子大生の1年を描く。卓越した空間認識能力と平衡感覚に恵まれた彼女は、たちまち三次元の世界を自在に飛び回る術を身に着ける。東京の大学に進学したはずなのに、合宿に次ぐ合宿でほとんど滑空場暮らし。高価な機体やら維持費、遠征費など、部活として続けていくには非常にカネもかかりそう。ところが、恋にあこがれる普通の女子がいつしか大空に恋をしていく過程は清々しいほど純粋だ。雲の流れから風を読み翼角を調整しながらも、冷静に操縦桿を握るヒロインの笑顔はまぶしいほどに輝いていた。上空から見た地上の景色が丁寧に再現されていた。
体験飛行でグライダーの魅力にはまったたまきは、主将の倉持にあこがれつつも2年の空知にしごかれる。その後、合宿を兼ねた他校との試合で異母姉妹のちづると再会、嫌味を言われる。
たまきは屈託のない性格で好奇心旺盛、人見知りもせず誰とでも仲良くなれる。そんな彼女が鬱陶しかったというちづる。親の再婚という微妙な家庭事情が、同じ屋根の下で暮らしていた彼女たちの間に複雑な感情を芽生えさせている。このあたり、姉妹といえども仲が良いとは限らない、血縁だからこその葛藤があると教えてくれる。十代でそれを経験するのはつらいことだとは思うが。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
倉持は朝比奈というOBの支援を受け、一流のグライダー乗りを目指している。主将の責任を果たそうと頑張りそれなりの結果も残している。なのに、大学最後の試合を残したまま、卒業もせずにドイツに渡ってしまう。このあたり、いくら朝比奈が意地悪な性格だとしても、倉持の未来を考えれば卒業まで待ってやるべきなのではないだろうか。倉持も空知の退部届は一時預かりにしたくせに、自分はたまきたち部員に何も知らせずに突然連絡を絶つ。その顛末の着地点にも疑問符が付いた。
監督 橘正紀
出演 堀田真由/島崎信長/榎木淳弥/小松未可子
ナンバー 44
オススメ度 ★★*
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