こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

白いトリュフの宿る森

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斜面にしがみつくようにして男が土を掘っている。そばにいる2頭の犬がかすかなにおいをかぎ分け、飼い主に知らせる。カメラは、人里離れた山奥の森で長年トリュフ採集をしてきた老人たちの日常を追う。トリュフが取れる場所は秘中の秘、それぞれの採取人が自分だけが知っているスポットを持ち、他人には絶対に教えない。代替わりした同業者の息子が懸命に頼み込んでもけんもほろろの対応、墓場まで持っていくつもりだ。また、採取人同士の絆は固く、顔を合わせると情報交換に余念がない。一方で仲買人同士は競争が激しく、慣習を守らない者はいい顔をされない。まるで100年も変わっていないような村の暮らし、その時間が止まったような世界にどっぷりと浸かり、己の流儀は決して曲げない老人たちの姿は、むしろ潔さすら覚えた。

北イタリアの田舎町では、70代80代と思えるような老人たちが犬とともに山に入りトリュフを探している。大量に収穫できるものではないが、生活に必要な収入はあるようだ。

子の世代はもうとっくに独立して戻ってこないのだろう、村には若者たちがいない。老人たちは、強欲な者たちが勝手に山を荒らしまわり、毒餌を撒いてトリュフ犬を殺していると嘆く。グルメ志向による末端価格の上昇が主な原因なのだろう。トリュフは勘と経験を頼りに見つけるしかないのに、カネになるとわかると、今まで大切に守ってきた自然に対する敬意を踏みにじる人間が現れるのだ。時代遅れと自覚はしている。旧式のタイプライターに思いをつづるロン毛老人のワイルドな風貌が、世間の変化に流されずに生きてきた男の矜持を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

87歳になった老採取人は、妻から引退を強く求められ肯く。でも、人々が寝静まった夜になると、窓からひっそりと抜け出して犬とともに山に向かう。ずっと採取人として生きてきた。トリュフこそが生きる楽しみ、誰に禁止されても死ぬまで止めない。まるでいたずらっ子のような生き生きとした老人の瞳は、自由を味わう喜びに満ちていた。

監督     マイケル・ドウェック/グレゴリー・カーショウ
出演     
ナンバー     45
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://www.truffle-movie.jp/