こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モービウス

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自らの病気のために開発した治療薬で図らずも吸血鬼になってしまった。まともに歩けなかった貧弱な肉体は超人的なスピードとパワーを身に着け、武装した傭兵たちから一瞬にして血を吸い取ってしまう。そしてその間の記憶はない。物語は、医学界に革命をもたらした天才医師が同じ効能を望んだ親友の暴走を止める姿を描く。不自由な環境で育った彼らは世間に対して潜在的な怨恨を抱いている。だが主人公は理性で感情を抑制し、高い知能と鋼鉄の意志で業績を上げてきた。ところが一度覚えた人血の味は、時間と共に彼に耐えがたい渇きをもたらす。善意の医師としての顔と血を望む悪魔の顔、その相克の中で彼は苦悩し己の真実を見つめなおす。ヒーローなのかヴィランなのか、その中途半端な立ち位置が、正義が迷走する時代を象徴する。

コウモリを使って先天的血液病の血清を開発したマイケルは自分で人体実験をする。その副作用は激しく、人工血液を飲み続けなければ抑制できない。幼馴染のマイロも血清を使い、吸血鬼化する。

ジャングルの奥地でコウモリを見つけ、その血を人血とキメラ化し万能血液を合成する。マイケルの研究は、生体実験とコンピューターの計算及びシミュレーションがディテール豊かに再現され、本物のラボにいるような気分にさせてくれる。一方、30年以上も杖を使わなければ歩けなかったマイロも、マイケルの血清で生まれ変わる。足も背筋もしゃきっと伸び全身に力がみなぎったマイロは、生命の実感だけでなく全能感まで手に入れる。今までの人生を取り戻すかのように羽を伸ばし、バーで絡んできた男たちを制裁するシーンは、心まで解放された喜びに満ち溢れ、生きる意味とは何かを考えさせてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

傭兵殺しの容疑者として追われているマイケルは、捜査をかいくぐりつつマイロを止めようと説得を試みるが、もはや手遅れ。2人のバトルは動きが速いうえに夜の闇の中で繰り広げられるため、少し見づらかった。コウモリつながりの男は次回作以降に関係してくるのだろうな。

監督     ダニエル・エスピノーサ
出演     ジャレッド・レト/マット・スミス/アドリア・アルホナ/ジャレッド・ハリス/アル・マドリガル/タイリース・ギブソン/マイケル・キートン
ナンバー     61
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.morbius-movie.jp/