こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シャドウ・イン・クラウド

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容赦ないセクハラとマウンティング、まだまだ戦場が男の聖域だった時代、女の言葉は誰も信じない。物語は、爆撃機に乗り込んだ女将校が味方の偏見と伝説の怪物と本物の敵と戦いながら窮地を切り抜けていく姿を描く。特命任務を負っているのに兵卒からも見下される。狭い空間に閉じ込められて身動きが取れない。雲の上で怪物が襲ってきてもひとりで対応を迫られる。やがて、男たちの無能ぶりに耐えかねた彼女は大切なものを守るために命を張った行動に出る。ほとんどが銃座に座ったままのヒロインと無線機から聞こえてくる男たちの会話で構成される前半は、彼女が身体的接触や性的な視線にさらされることがない分、ひたすら卑猥な言葉が投げつけられる。それくらいで心折れない彼女は、男社会で生きる女の覚悟が凝縮されていた。

ニュージーランドからサモアに向かう爆撃機に最高機密の入った荷物と共に乗り込んだモードは、クルーの強烈な拒否反応に遭い銃座に閉じ込められる。離陸後グレムリンを発見する。

グレムリンは機内に侵入し彼女の荷物を奪う。機内では男たちが右往左往するばかりでだけで、日本軍の戦闘機が接近してきているのに気づかない。銃座から脱出してグレムリンを退け、荷物を奪還し、日本軍の攻撃をかわしながら、爆撃機の外側から機内に戻らなければならない。そんな、スーパーヒーローものでもなかなか見られない不可能なミッションに彼女はひるまずに挑む。クロエ・グレース・モリッツには「キック・アス」で見せた驚異的な身体能力がある。だからこそ、このムチャ振り的なアクションにも説得力があった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後も役に立たない男どもを制御・指揮しながら次々と降りかかる危機を乗り越えつつ、大切な荷物を守るモード。銃器の扱いや飛行機の操縦に長けているだけでなく、素手の格闘にも抜群の強さを見せる。いまや彼女は万能のスーパーソルジャーであると同時に愛情深い母。ただ、女の活躍は歓迎すべきだが、ここまでやるとジェンダーフリーの精神からずれている。

監督     ロザンヌ・リャン
出演     クロエ・グレース・モレッツ/ビューラ・コアレ/ テイラー・ジョン・スミス/カラン・マルベイ/ニック・ロビンソン
ナンバー     62
オススメ度     ★★


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