こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カモン カモン

気を引くために生意気なことを言う。困らせようとわがままな行動を取る。大人がどれだけ自分に関心を持っているかをいつも試さずにはいられない。そして怒られるとそっぽを向いて被害者のふりをする。物語は、疎遠だった甥としばらく暮らすことになった男が直面する困難を描く。9歳ながら自己主張は強く、絶対に謝ったりはしない。面倒を見てもらっているという感謝の気持ちはなく、大人が自分に合わせるのが当然。特に甘やかされて育ったわけではないのに、なんでも言うことを聞いてもらえると思っている。日本なら、ダメなものはダメとはっきりと叱りつけるだろう。だが米国のリベラルはこんな子供でも一人前の大人として扱う。もちろん物理的な暴力はいけないが、対人関係のマナーはきちんと躾けるべきではないかと思ってしまう。

全米の子供たちにインタビューをして回るジョニーは、LAにいる妹の息子・ジェシーを預かる羽目になる。いったんNYに連れて帰るが、ジェシーは気まぐれで問題ばかり起こす。

歯ブラシを買いに行ったコンビニで急にいなくなる。人通りの多い雑踏でわざとはぐれる。子供の安全が重視される米国、ジョニーは血眼になってジェシーを捜す。ジョニーの心配をよそにジェシーはふざけた態度を崩さず、それがさらにジョニーを苛立たせる。子供とはいえ独立した人間、その考えを尊重すべきという思想は理解するが、一つ間違えれば犯罪に巻き込まれかねない事態なのだ。ジョニーはもっと感情的になってもいいと思う。さらに、嘘をついてトイレに籠り駄々をこねるに至っては、見ているこちらの堪忍袋の緒が切れそうになった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろん映画は、理解できない他人とはきちんと対話することが大切と訴えている。自分だけが正しいと信じ込むのはばかげたこと。ウクライナがロシアの侵略を受けている現在、考え方の合わない相手は力でねじ伏せるという発想は否定されるべきだ。ただ、ガキ相手にここまで気を遣う必要はない。ジェシーはロクな大人にならない気がした。

監督     マイク・ミルズ
出演     ホアキン・フェニックス/ウッディ・ノーマン/ギャビー・ホフマン
ナンバー     78
オススメ度     ★★*


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