ジョルジュ・メリエスの昔から始まった特殊効果の歴史は、デジタルに移行した21世紀もなおその根幹は変わっていない。いくらCGで緻密に描ける時代になっても、物理的な質量を持つ物体の存在感にはかなわないからだ。CG技術を大躍進させた「T2」やその集大成である「ジュラシック・パーク」など、ほとんどコンピューター上で作画されていると大々的に広報されていたが、職人たちが模型を一つずつ手作業で仕上げていったという事実は衝撃的だ。あの二足恐竜・ヴェロキラプトルさえスーツアクターが着ぐるみの中で演じていたとは。。。カメラは、映画に登場する怪物や宇宙人を再現する職人たちの苦労をインタビューにまとめる。想像上の産物をだが、時に知性や感情を持っている。彼らの精神は人間以上の働きをする場合もある。その内面を表現するために重ねた苦労は、時にその作品を不朽の名作にするのだ。
“特撮” は、サイレント時代からあった人形を1コマずつ撮影する手法から特殊メーク、ボディスーツを経て、精巧な模型を制御する時代になる。だが、CGの可能性が現場を一変させる。
CGを使えばどんな形状でも可能になるし大量に同じようなものが作れる。「スターシップ・トゥーパーズ」におけるバグの大軍はこの技術なしでは再現不可能。この作品自体はイマイチだったが、今でも忘れられないインパクトの大きさはCGのおかげだ。一方で戦闘員が大型のバグに食われるシーンは実写との合成。リアリティを出すためには完全にはCGに頼れない、むしろアナログ的撮影方法との融和が映像に奥行きをもたらすのだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
CGの限界に気づいたクリエーターたちはロボットの上にシリコン被膜を被せる方法で自らの生き残りを図る。細かい表情の変化や指先の動きは、やはりCGよりも迫力がありリアリティも違う。情報を詰め込んだCG映画が一時はやったが、近年はCGにアナログ的な味わいを残す映像が支持されるようになる。この映画では取り上げられないが、「シン・ウルトラマン」はそのトレンドの先端を走っている。
監督 ジル・パンソ/アレクサンドル・ポンセ
出演 ギレルモ・デル・トロ/ジョン・ランディス/ジョー・ダンテ/ケビン・スミス/リック・ベイカー/フィル・ティペット/スティーブ・ジョンソン
ナンバー 91
オススメ度 ★★★