こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リアリティ

買い物から帰ったら、体格のいい男たちが待っている。物腰は穏やかだが視線には確固たる意志が宿っている。何が起きたのか。自分が何かしでかしたのか。不安に取りつかれた女は必死で平静を装うが、瞳は脅えている。映画は、機密文書漏洩容疑をかけられた女と、彼女を尋問するFBI捜査官のやり取りを再現する。黙秘すると印象が悪くなると、彼女は話せる範囲で応じようとする。彼女の発言は記録に取られ、さらに深掘りされていく。捜査官たちは一言も聞き漏らさないように耳を研ぎ澄まし、彼女がなにげなく口にした単語に反応する。すべて調べはついているという態度で臨む捜査官と、どこまで知られていてどこからがハッタリなのかを見極めようとする女。息をのむ緊張感の下で繰り広げられる会話劇は、圧倒的なリアリティに満ちていた。

元空軍勤務で政府機関に勤めていたこともあるリアリティに、FBI捜査官のギャリックとテイラーが声をかける。話をするうちに家宅捜査が始まり、リアリティはスマホを取り上げられる。

その過程で、リアリティは中西アジアの言語に精通していてアフガン勤務を志望した優秀な軍人でもあったことが明らかになる。希望は通らず退屈な国内勤務、いつまでたっても異動は叶わない。いつしか不満がたまり、勤務先のセキュリティの甘さを突いて機密を持ち出すようになる。捜査官たちはすべて証拠を握っていて、リアリティからさらなる証言を引き出そうと言葉の端々にトラップを仕掛けてくる。リアリティは慎重に答えを探すが、心理的な揺さぶりをかけられると余計なことまでしゃべってしまう。このあたり、リアリティを少しずつ追い込んでいくFBIの洗練された尋問テクニックは、一度目をつけられたら逃げられない恐ろしさを感じる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

リアリティの動機は現状への憂さ晴らしとちょっとしたスリルを味わう程度のモノだったのだろう。隠蔽された真実を暴くなどというジャーナリスティックな信念ではない。国家の安全保障か国民の知る権利か、そのバランスを考えさせられた。

監督     ティナ・サッター
出演     シドニー・スウィーニー/ジョシュ・ハミルトン/ マーチャント・デイビス
ナンバー     209
オススメ度     ★★★


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