こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

仕掛人・藤枝梅安

水中を潜航し小舟に乗る悪党を引きずりおろして仕留める。2メートル以上もある土塀を飛び越えて身を隠す。気配を完全に消して屋敷に忍び込み、相手に悟らせないまま命を絶つ。だが、昼間の顔は評判の鍼医師。物語は、恨み憎しみを抱いた仇敵を本人に代わって誅殺する暗殺代行業者たちの葛藤を追う。深い哀しみを湛えた瞳、元締めからの依頼は断れない掟、殺さなくてもいい人を殺めてしまった後悔。正義感に燃えているわけではない。弱者を救済したいわけではない。だが、あまりの理不尽がまかり通っていると知ったとき、彼らは不退転の決意をもって標的を仕留めにかかる。そんな血なまぐさい行為を裏家業とする主人公を豊川悦司が寡黙に演じ、片岡愛之助扮する陽キャラの相棒と好対照をなす。鍼で急所を突くのはまだしも、毒楊枝は犯行手口がばれやすいのでは。

怪しい商売で繁盛している料理屋女将・おみのの仕掛を依頼された梅安はさっそく内偵を始める。かつて梅安は先代の女将を仕掛けたことがあり、挨拶に来たおみのの顔を見て血の気が引く。

一方、手練れの浪人が数人の刺客を返り討ちにしているところに遭遇、浪人と彼が匿っている女の事情にも深くかかわってしまう。また、同業者の彦次郎が別ルートからおみのにつながる仕掛をするなど、狭い人間関係の中で渦巻いていた欲望が少しずつ煮詰まっていく。請け負ったからしている仕事と、人として許しがたい男女に対する天誅。矛盾した状況に板挟みになりながらも決して表情を変えることなく淡々と己のすべきことを実行していく、封建的身分社会から一歩引いたアウトサイダーとして生きる仕掛人たちの覚悟がクールに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、仕掛を発注する蔓が複数で、依頼人も善人悪人さまざま。混沌とした状況で、親友同士の梅安と彦次郎が戦わなければならないなどという設定があれば、彼らの抱える苦悩も表面化してもっと面白くなったはず。梅安がだまし討ちにあって窮地に陥り、そこから脱出するようなアクションも見たかった。

監督     河毛俊作
出演     豊川悦司/片岡愛之助/菅野美穂/小野了/高畑淳子/小林薫/ 早乙女太一/柳葉敏郎/天海祐希/板尾創路/大鷹明良/六角精児
ナンバー     24
オススメ度     ★★*


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