こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

仕掛人・藤枝梅安2

都に上る道中で偶然見かけたのは妻子を死に追いやった仇。年月を経てもその憎き顔は決して忘れない。復讐に燃える男はひそかに仇の後をつけ時機をうかがう。物語は、カネで暗殺を請け負う “仕掛人” 稼業の男たちの葛藤を追う。記憶の根底に焼きつけられた忌まわしい出来事がふとした瞬間によみがえる。突然舞い降りたチャンスに、胸がざわめき心は先走る。だが相棒は冷静に状況を分析し、本当に殺すべき相手を見極めようとする。そして、さらにちらつく剣客の影。ターゲットに近づいているはずが、いつしか自分たちの命を狙う男たちをおびき寄せている。人ごみに紛れ込んで逃げることができなかった時代、執念を糧に倒すべき相手を追い続ける男たちの、運命にがんじがらめにされながら生きる姿が哀しかった。

梅安と彦次郎は京都に向かう道中で身なりのいい侍を見かける。彦次郎はその侍が妻子を殺したというが、梅安が人定すると、侍には無頼の徒となった双子の弟がいることが判明する。

さらに尾行・監視を続けると、侍は大坂の大元締めと接触している。大元締めから話を聞いた梅安は、別の同業者が断った仕掛を請け負うことにする。つながった点と点、その線はさらに蜘蛛の巣のように広がり、中心にいる梅安はふたつの憎悪の板挟みになりながらも、己のすべき仕掛をこなしていく。プロフェッショナルが仕事に私情を持ち込むのは禁物、時に冷静さを失いがちな彦次郎を制し練り上げた計画を粛々と実行に移していく梅安は、心に大きな後悔を抱えて生きている者だけが持つ達観に満ちていた。一方で、普段は苦虫をかみつぶしたような顔なのに女を口説くときは饒舌かつ強引になるあたり人間味があっていい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

なんとか無頼集団を追い詰め、彦次郎は妻子の仇を取る。ところがそこに現れた剣客たちが梅安たちに襲い掛かってくる。決着をつけなければならない過去と対峙したとき、人はどうすべきか。覚悟を決めた梅安の瞳は、人を大勢殺めてきた人生への大いなる苦悩が刻み込まれていた。

監督     河毛俊作
出演     豊川悦司/片岡愛之助/菅野美穂/高畑淳子/小林薫/一ノ瀬颯/椎名桔/佐藤浩市/石橋蓮司/高橋來
ナンバー     64
オススメ度     ★★★


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