こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

崖上のスパイ 

味方の情報を漏らしている裏切り者がいる。敵の組織にも手助けしてくれる内通者がいる。合言葉はあぶりだすための罠かもしれない。誰を信じるべきなのか、誰に正体をさらすべきなのか。物語は、特命を帯びた男女4人のスパイが当局の捜査網をかいくぐりながらミッションを遂行する姿を描く。パラシュート降下したのは雪深い森。防寒装備と武器・必要書類で着ぶくれしている。目立たぬように隠密行動に徹しても捜査網は少しずつ狭まっていく。列車のトイレに指文字を残し、街角の電信柱に指令を記したメモを張る。まだ電子機器のなかった時代、工作活動をする方も監視活動をする方もすべてはマンパワー頼り、わずかな油断が命取りになる。そんな緊張感の中でも自らの使命をまっとうしようとする彼らの鋼鉄の意志が美しく気高い。

満州に侵入した共産党工作員の張、王、楚、小蘭の4人はハルビンに向かう。仲間のアジトに潜伏し、日本軍施設から脱走した証人を国外に脱出させる任務を決行する日を待つ。

通りを多くのクルマが走り各国領事館やハリウッド作品も上映する映画館もある都会に一度紛れ込むと、なかなかスパイはあぶりだせない。特務警察は張を捕え凄絶な拷問にかけるが、張は通電され殴打され切り刻まれ逆さ吊りにされてもなお脱出のチャンスをうかがい、見張りを倒して逃亡しようとする。肉体的な苦痛を克服する信念、ソ連で訓練を受けたというスパイたちの練度の高さがうかがわれる。イデオロギーに命を懸けるとは、自分の屍を乗り越えてでも仲間がきっと目的を達成してくれるという全面的な信頼であると張の不屈の精神は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

虚々実々の駆け引きや胸を締め付けるようなサスペンス、手に汗握るアクションといった欧米風スパイ映画の要素は控えめで、どちらかというと中国共産党プロパガンダ臭が強烈に漂ってくるが、自分を守るためには時に味方を見殺しにしなければならない立場にいる内通者の苦悩はリアルだった。裏切り者の処刑法が「ゴッドファーザー」を思い出させる。

監督     チャン・イーモウ
出演     チャン・イー/ユー・ホーフェイ/チン・ハイルー/リウ・ハオツン/チュー・ヤーウェン/リー・ナイウェン/ニー・ダーホン/ユー・アイレイ
ナンバー     24
オススメ度     ★★*


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https://cliffwalkers-movie.com/