こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホーリー・トイレット

目覚めると密室にいる。頭を強打したせいでなぜこうなったのか記憶が飛んでいる。身動きが取れないと思ったら、鉄筋が右腕を貫いている。物語は、狭い空間に閉じ込められた男が脱出のために孤軍奮闘する姿を描く。汚水槽の中に落ちたスマホから折り尺で電話を掛けるがすぐに切られる。外はにぎやかなセレモニーが開催中で、あと30分ほどで爆破され生き埋めにされる。それでも、パニックにならずに冷静さを取り戻し、外の様子をうかがいつつ錠をやすりで切り、光学測定器で距離を測り、なんとか助けを呼ぶために手の届く範囲にある様々な小道具を駆使する男は、やがて少しずつ打開策を見出だしていく。絶望的なシチュエーションで激しい痛みに耐えながら頭をフル回転させて生き延びようとする彼の意志は、何事も諦めたら負けであると教えてくれる。

古い建物を解体しようとする市長候補・ホルストに殺されかけたフランクは、工事現場の穴に落とされた簡易トイレで気が付く。壁に穴をあけて周囲を見るとダイナマイトが仕掛けられている。

再開発を選挙公約にしているホルストは、自然保護団体に妨害され禁止命令が出されているにもかかわらず爆破を強行しようとしている。女性運動家も縛られたまま穴に放置されている。ホルストの悪辣さを知ったフランクは絶対に彼の悪事を告発すると決意を固める。だがその間、自分の妻・マリーがホルストと浮気している妄想に取り憑かれるなど、刻一刻タイムリミットが近づくなかで今までの人生を振り返って反省したりする。そのあたり、フランクの弱さが強調され、彼のキャラに人間臭さのみならず深い奥行きと魅力を与えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

汚水槽からは汚物があふれている。引火した火を消そうとして自ら糞尿をかぶるフランク。そのあと手洗いの水で流すが、染み付いた悪臭はなかなか取れなかったに違いない。映画ではフランクが知覚する臭いや熱までは表現できないが、彼が体験する最悪の事態における感覚的な刺激は右腕の激痛を含めてリアルに伝わってきた。

監督     ルーカス・リンカー
出演     トーマス・ニーハウス/ギデオン・ブルクハルト/オルガ・フォン・ラックバルト/フリーデリッケ・ケンプター
ナンバー     45
オススメ度     ★★★


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