こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハンサン 龍の出現

船首に竜頭の装甲を施した朝鮮軍船が突撃してくる。舷側に衝撃を受けた日本船の乗員は、その圧倒的な破壊力に脅えうろたえる。海戦においても銃器・大砲が使われ始めた時代、それでもまだ軍船そのものの装備性能強度が雌雄を決するのが象徴的だ。物語は、太閤による朝鮮侵攻を退けた大海戦を再現する。破竹の勢いの日本軍に対し、王が首都を放棄した朝鮮軍は防戦一方。さらに大艦隊を送り込んできた日本軍を迎え撃つために、朝鮮軍は潮の流れが速く霧が濃い海域に誘い込もうとする。双方、敵陣にスパイを送り込んでの諜報戦、武将たちの対立をまとめる司令官、そしてボードゲームのような海戦での駆け引き。朝鮮側の視点だけでなく日本側の内情にも同じくらい時間を割き、反日色を薄めているところに好感が持てた。

脇坂安治を総対象とする日本軍は釜山浦に司令部を構え援軍を待つ。防戦派が主流の朝鮮軍では、イ・スンシンが熟慮を重ねる。日朝両軍はハンサン島付近の海峡で対峙する。

イをリーダーとする朝鮮軍、将軍たちを集めた軍議では意見がまとまらず、決断を迫られたイは結論を先送りするばかり。一方の脇坂の司令部では加勢に来た加藤嘉明との確執が表面化、脇坂は非常手段に訴える。このあたり、太閤子飼いの武将たちも功績を争って策謀を巡らせ結局は自分の取り分が増えるように画策するなど、戦国時代の特色が色濃く残っていて興味深い。そしていよいよ決戦の日、朝鮮軍は鶴翼の陣、日本軍は魚鱗の陣に艦隊を配置する。これら古代中国発祥の陣形は陸戦用と思っていたが、この海戦でも用いられる。大砲という弓矢・火縄銃より殺傷力が強い新兵器の長所を生かした布陣、日本海海戦の300年以上も前からこんな戦い方があったのか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

降倭の存在も印象的だった。日本の武将・俊沙が寝返って朝鮮軍のために闘う。兵の命を粗末にする日本軍に対する反発からなのだが、当時の朝鮮軍はそれだけ将兵を大切に扱ったということなのか。日本から見れば裏切り者だが、その義の精神は美しかった。

監督     キム・ハンミン
出演     パク・ヘイル/ピョン・ヨハン/アン・ソンギ/オク・テギョン/コンミョン
ナンバー     10
オススメ度     ★★★


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