こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヴィレッジ

隔絶した山里、古いしきたりと伝統が強く残り人々はその土地の呪縛から逃れられない。物語は、産業廃棄物処分場の補助金で潤った村に隠された真実を巡って葛藤する人々を描く。表向きは雇用を増やす公共事業、裏では反社組織が仕切り、明らかに違法なゴミを捨てている。ゴミ処分場で底辺の仕事についていた若者は幼馴染の女の帰村でやり直すチャンスを与えられるが、彼女に横恋慕する村長の息子は面白くない。村長は清濁併せ呑み村の振興を最優先さる。そして発覚した巨大な不正。誰もが顔見知りの狭いコミュニティでしか生きる術を持たない主人公の閉塞感がリアルに再現されていた。薪の炎に照らし出されて舞う能楽師が醸し出す幽玄の美は、この土地に住む人間たちの心に巣くう醜さを見透かしているようだった。

昼夜を問わずゴミ埋め立て場で働く優は東京から戻ってきた美咲に声をかけられ、小学生向けのガイドツアーの引率を任される。結果は好評で、優は処分場の広報担当に抜擢される。

優の父はかつて処分場反対の急先鋒で対立集団のメンバーを殺害した過去がある。母はギャンブルと酒に溺れ借金を膨らませている。村人は優を白眼視し、優は肩身の狭い思いでこの村にしがみついている。そんな時、村長にかけられたやさしい言葉。優は美咲に支えられて広報の仕事をこなしていくうちに本来の明るさを取り戻していく。ことあるごとに優に絡み殺人者の息子とさげすむ村長の息子・徹が、因習にとらわれた古い人間関係を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、優の活躍で村に観光客が押し寄せ、TVにも取り上げられるようになる。取材クルーの前で歯切れよく村の見どころを紹介していく優。彼を誇らしげに見守る美咲と、嫉妬に駆り立てられる徹。3人を巡るトラブルを解決したはずなのに、優にはさらなる難題が降りかかる。恩人は裏切れない。恋人を失いたくない。だが、これ以上の不正には加担したくない。義理と人情に身動きが取れなくなった優の焦燥には、選択を迫られた者の苦悩が凝縮されていた。

監督     藤井道人
出演     横浜流星/黒木華/一ノ瀬ワタル/奥平大兼/杉本哲太/西田尚美/木野花/中村獅童/古田新太
ナンバー     74
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://village-movie.jp/