こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイ・ボディガード

otello2005-01-02

マイ・ボディガード MAN ON FIRE

ポイント ★★
DATE 04/12/23
THEATER 109シネマズ港北
監督 トニー・スコット
ナンバー 152
出演 デンゼル・ワシントン/ダコタ・ファニング/クリストファー・ウォーケン/ジャンカルロ・ジャンニーニ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


米国人のメンタリティでは、民主的に決められたはずの法よりも正義に裏打ちされた復讐が優先されるのか。確かに誘拐を生業にしているような悪党や、その悪党のカネを盗んで私腹を肥やす役人など制裁を受けて当然だ。しかし、一米国人が、いかに腐敗しているといえどもメキシコという主権国家で白昼堂々路上でバズーカ砲をぶっ放したり、若者でにぎわうクラブを爆破したりして許されるものだろうか。確かに悪党以外は死なないしケガもしない。それでも私的制裁をここまで派手に行うのは正義の押し売り・主権の侵害以外の何ものでもない。


誘拐が頻発するメキシコでラモスという富豪の娘・ピタのボディガードを請け負ったクリーシー。心に深い傷を負っているクリーシーはピタとふれあううちに人間らしい心を取り戻していく。そんな時、ピタが誘拐されたうえ、身代金の受け渡しに失敗したことからピタは殺される。元特殊工作員のクリーシーは復讐を誓い、事件に関わった悪人を1人ずつ消していく。


誘拐犯、汚職警官、さらには身代金の横取りを狙うヤツまで主人公の周りには悪党がウヨウヨいて、二重三重のトラップが仕掛けてある。その謎をクリーシーは正義感のあるジャーナリストと警官の助けを得て解きつつ、復讐を果たしていく。しかしその過程が極めて暴力的で野蛮極まりない。指を切り落としたり肛門に爆弾を詰め込んだり。もちろん筋金入りの悪党に情けなど必要ないのだが、それでももう少し知的な方法はないものだろうか。これが現実といわれればそれまでだが、正視に耐えない。


制裁の過程でクリーシーの心象風景を描写した、褪色させたフィルムにコマ落としという映像が挿入される。最初こそ彼の希望なき乾いた胸の内の様子を見て取れたが、何度も繰り返すのでしつこい。まるで覚えたての技術をやたら使いたがる新人監督のようだ。トニー・スコットほどのベテランが多用すべき手法ではない。ダコタ・ファニングの無垢な笑顔がなければこの作品は救われなかっただろう。


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