ハイネケン誘拐の代償 KIDNAPPING MR. HEINEKEN
監督 ダニエル・アルフレッドソン
出演 アンソニー・ホプキンス/ジム・スタージェス/サム・ワーシントン/ライアン・クワンテン/マーク・ファン・イーウェン/トーマス・コックレル
ナンバー 83
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
警察は想定通りに動き、人質の家族は気前よく身代金を払うはずだった。十分に手間暇をかけ綿密に練った計画とプロ犯罪者を思わせる洗練された手口をみせれば、逃げ切れると信じていた。ところが警察からは一切反応がなく人質は意外にタフで、目論みはすぐに綻びを見せ始める。そして苛立ちはいつしか疑心暗鬼となり、結束にヒビが入っていく。物語は大富豪を誘拐した5人の若者たち徐々に追い詰められていく過程を描く。信頼できる仲間に恵まれた幸運に気付かず濡れ手に粟の大金を夢見る犯人グループは、平気で人を殺すような悪党ではなく、家族を大切にする気持ちも強い。“裕福とは莫大なカネを持つか多くの友人を持つか、両方はあり得ない”という老人の言葉通りの行動をしてしまう彼らの愚かさが哀しくも滑稽だ。
会社の資金繰りに困ったコルは4人の幼馴染と共にビール会社社長・ハイネケンの誘拐を企む。銀行強盗で得た元手で準備を整え、ハイネケンと運転手を拉致、アジトに監禁する。だが、警察は犯行声明を無視、時間だけが過ぎていく。
百戦錬磨のビジネスマン・ハイネケンは早々とコルたちの素性を見抜き、次々と要求を出す。鎖につながれた状態でも意気軒昂、自分よりも運転手の体調を心配している。一方で警察の出方がわからないコルたちは神経をすり減らしていくばかり。このあたり、楽してカネを手に入れようとする短絡的な犯人グループと、巨大企業を育て上げたハイネケンの人間の器の違いがくっきりと出て、強固な意志こそが運命を切り開いていくことを強烈に意識させる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
何とか身代金を奪うが、今度は死ぬまで続く逃亡生活にうんざりする犯人たち。確実に包囲網は狭まり、家族にも連絡が取れずに焦燥感が募っていく。投降した瞬間、やっと重荷から解放されたと思ったに違いない。身代金の大半は行方不明のままらしいが、もしハイネケンが密かに回収し裏金として処理していたならば、やはりコルたちはとてつもない“怪物”を相手にしていたというべきか。。。
オススメ度 ★★★