こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

香港国際警察

otello2005-03-14

香港国際警察 新警察故事


ポイント ★★★★
DATE 05/3/10
THEATER 有楽町スバル座
監督 ベニー・チャン
ナンバー 30
出演 ジャッキー・チェン/ニコラス・ツェー/チャーリー・ヤン/ダニエル・ウー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ハリウッドに進出しても変にいじられるだけだったジャッキーが久しぶりに本領を発揮してくれた。自分の肉体を酷使し、観客を楽しませることだけを考える。しかもここではシリアスなドラマと手に汗握るアクションに徹し、人情に訴える場面まである。30本近くジャッキーの主演作を見たが、見終わって目頭が熱くなった作品は初めてだ。この作品は彼のキャリアの中で間違いなく最高傑作だ。


ゲーム感覚で銀行を襲い警官を殺す犯罪グループに9人の部下を殺されすっかり生きる希望を失っていたチャン警部。酒びたりの日々を送るある日、シウホンという若い刑事がチャンの相棒になり、チャンは再び犯罪グループの捜査にあたる。


ビルの壁を垂直に駆け下り、バスの屋根を飛び跳ねる。もちろんカンフーアクションも健在。まさしくジャッキーの肉体信仰がなせる映画ならではの神業だ。それだけではなくトラウマに苦悩し酒に溺れるジャッキーには、ベテラン俳優の味わいもたっぷりとにじみ出ている。もちろんジャッキーのための映画なのだが、自分だけが目立つのではなくきちんと若手を育てようとしているところがいい。体を張った映画作りに対する愛情を後輩に伝えようと言う熱意がスクリーンからひしひしと伝わってくるのだ。


クライマックスのコンベンションセンターを使った壮大なアクションも、人間の血が通った手作り感があってとても質感がある。CGという表現技術を拒否して、生身の体でスタントをこなす。これこそ香港映画の真髄、ジャッキーの真骨頂。そして、最後に彼を慕う若いニセ警官が正体を明かす。そこで語られる親子の情もまた、ジャッキーがハリウッドで決して演じることができなかった心の通ったキャラクター。やはり香港映画で広東語を話すジャッキーの輝きは一等優れている。


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