こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

奈緒子

otello2008-02-18

奈緒子

ポイント ★★
DATE 08/2/16
THEATER WMKH
監督 古厩智之
ナンバー 41
出演 上野樹里/三浦春馬/笑福亭鶴瓶
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


たすきをリレーするのは信頼をつなぐこと。ひとりの天才ランナーがチームメイトとの軋轢に苦しみながらも成長し、猛練習とそれを乗り越えたレースの中で仲間を信じることを学んでいく。しかし、本来主人公のはずの少女がその成長物語に積極的に絡んでくるわけではなく、彼女の存在が盲腸のようになっている。駅伝に賭けるという熱い思いに支えられているのでもなく、恋が芽生えることもない。テーマがぼやけた不完全燃焼の青春ドラマを見せられているようだ。


陸上部のマネージャー・奈緒子は競技会で雄介というランナーに出会う。かつて雄介の父は奈緒子を助けようとして命を落としたという因縁があり、奈緒子は雄介のレースの応援に行くが給水を拒否される。


ふたりの事情を知り、わだかまりを解こうとして陸上部の合宿に奈緒子を参加させることで、監督は何を期待したのだろう。確かに奈緒子にとって雄介は「ケリをつけなければならない過去」で、雄介の独りよがりの性格を矯正する役柄を期待したのかもしれない。才能に恵まれたゆえに浮いてしまった雄介とチームメイトの架け橋、しかし、奈緒子の目は雄介しか見ていないのに雄介の心に飛び込んでいこうという気概が希薄。他の部員にとってはいい迷惑だろう。


監督が課すメニューに次々と部員たちが音を上げるが、彼の命があとわずかと知った奈緒子と雄介だけは駅伝に勝つために何をすべきか考えるようになる。レース本番になって、やっと他の部員も精一杯がんばっていることを知った雄介は謙虚な気持ちを取り戻す。しかし、そこでも「俺たちは雄介のコマ」といって毒づいていた先輩をはじめ他のランナーまでも「雄介につなげ」と言い出す始末。結局これではチームワークとは程遠く、みな雄介のために走っているようだ。雄介も期待にこたえようと無茶な走りでオーバーペースになりヘロヘロになるが、なぜか奈緒子に伴走されると元気回復、奇跡の大逆転で優勝してしまうというあきれた結末。運動会の親子リレーで、気持ちばかり先走って足が空回りして転ぶオッサンのような映画だった。


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