こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

三国志

otello2009-02-05

三国志 見龍卸甲


ポイント ★★*
DATE 08/12/5
THEATER KT
監督 ダニエル・リー
ナンバー 294
出演 アンディ・ラウ/サモ・ハン/アンディ・オン/マギー・Q
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


どこまでも続く中国内陸部の荒涼とした砂漠は、西部劇の舞台に似ている。時は国が3つに割れてそれぞれが覇を競う戦乱の時代、映画は勇猛と豪腕で名を馳せた一人の豪傑に焦点を当て、まっすぐな軍人としての生き様に迫る。そこに漂うのは、いかに腕が立とうとも、武に生きるものは所詮は支配者の駒に過ぎず、使い捨てにされる運命にあるという悲しみ。主人公の心象風景は、マカロニウエスタンのような弦をかき鳴らすギターの調べが似合っていた。


蜀軍に志願した趙雲は平安という男を兄貴分として慕う。ある時、平安が護衛を任された劉備の家族を魏にさらわれるという失態を演じるが、趙雲は単身救出に向かい、嫡子を奪還した上に曹操の剣まで手土産にするという大手柄を立て、やがて五虎将軍の1人にまで出世する。


複雑多岐にわたる登場人物が跳梁跋扈する「三国志演義」から趙雲だけをクローズアップすることで、物語はすっきりと分りやすくなっている。だが、得意の槍で敵兵をなぎ倒したり、関羽曹操と戦うシーンなどは、細かいカットをつなげる編集法のために殺陣が見づらい。CGやワイヤーを多用した超現実的なアクションとは一線を画しているが、何らかの独特な表現方法で撮影して欲しかった。


その後、趙雲は魏征伐の大将に任じられるが、孔明の策によって自分が捨石にされていたことを知る。さらに味方の裏切りにもあい、魏軍に包囲された挙句、魏の女大将・曹嬰と一騎打ちをする。弦を切られた弓を使うという奇抜な戦法を使うのが非常に秀逸なアイデアだった。そして両軍最後の突撃、その際、やたら爆発が起きるがこの時代に火薬はあったのだろうか。すべての兵を失った趙雲は最期にひとり突撃をする。そこには、悠久の歴史の流れの中でひときわ輝く槍の名手が見せる滅びの美学がひときわ輝いていた。


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