こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キングダム 運命の炎

睥睨するだけで兵どもはひれ伏し、言葉を発するだけで場は高揚感に包まれる。堂々たる体躯は何物も圧倒するオーラを放ち、バカ丁寧な言葉遣いは不可能を可能と思わせる説得力を持つ。そんな輝かしい歴戦の英雄を演じた大沢たかおの存在感は今作でも健在。物語は、群雄割拠する中華の統一を目指す王と、武勲を上げようと奔走する若者の活躍を描く。強大な隣国が侵攻してきた。占領地では捕虜も住民も皆殺しにされている。進軍を止めなければ拠点都市も略奪される。訓練が行き届いた敵兵を迎え撃つのは数で劣る農民兵。小高い丘に囲まれた平原を決戦の地に選んだ大将軍は様々な知略を仕掛け、劣勢を跳ね返そうとする。王の苦悩、将軍の葛藤、若者の奮闘、静と動を巧みに按配した映像はテンポよく展開し、視覚的な効果で飽きさせない工夫がなされている。

趙の侵略に備える秦王・政は軍議を開き、王騎将軍を召喚、総大将に任命する。王騎は目をかけてきた信に百人隊を預け、敵陣に奇襲を仕掛けて指揮官の首を取るという決死の任務を与える。

プロローグで、諸部族の抗争を平定した信の活躍が人形劇で解説される。CGで合成された人形たちは兵馬俑のような質感を持ち、走る跳ぶ斬る射るなどの動きを再現する。静止しているのに躍動感あふれる人形たちは、戦国時代中国の空気感を上質に表現していた。一方で、政が趙から脱出するときに使った一頭立て荷馬車が20騎ほどの趙軍騎馬隊に追撃されるが、どう考えても騎馬のほうが速いのになかなか追いつかない。さらに騎馬隊は至近距離からでも荷台しか攻撃しない。引馬を射れば簡単に政を仕留められたはずだが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

趙軍右翼を狙って戦場に投入された信の百人隊は小さな山を越え敵の側面に回る。そこでも信は戦術戦略等を一切考えず精神論を唱える。大声を張り上げ、剣を高く掲げて突撃するばかりなのだ。クライマックスであるはずの合戦シーンがいかにも大味なのが残念。人海戦術ではなくあっと驚くような新兵器や新戦術を披露してほしかった。

監督     佐藤信
出演     山崎賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/満島真之介/岡山天音/三浦貴大/杏/高嶋政宏/片岡愛之助/山本耕史/玉木宏/佐藤浩市/大沢たかお/濱津隆之
ナンバー     141
オススメ度     ★★*


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